自治会物件


 自治会の仕事というのは様々なものがあるようでありますけれども,すべては自分たちの住む町を住みやすくするという方向に向かっているわけでした。
 その中でも一番わかりやすいのは「美化」でありますね。しかし町を「美しくする」ということ以前に「汚くしない」ということが必要であり,その最重要事項が「犬の糞」であるようなんでした。

 そんなわけで,今回は某自治会さんの設置した「犬の糞カンバン」であります。直線の道路にほぼ同じカンバンが何枚も設置してあるわけですけれども,ほぼ同じながらも微妙に異なっているところがなんだかオモシロかったんでした。

 すべて最初に「犬のフン放置厳禁!!」と大きく書かれていて,下には同じ犬のシルエットが描かれているんでした。これが基本フォーマットでありますね。
 その間に書かれている文章に違いがあるわけでした。


 ということで,最初のカンバンであります。
「住む人の心を映し出す きれいな街づくりを…」
とのことなんでした。

 道路が住む人の心を映し出すとするならば,確かにフンだらけにはしておけないところであります。
 実際にフンを放置していくのが町の住人なのかどうかはわかりませんけれども,心ある人ならば住人の顔・心にフンをなすりつけていくようなことはしないはずでありますね。そういうのがウレシイ趣味の人はどうなのかわかりませんけれども。

 最後控えめに「…」と人の良心に訴えかけるこのカンバンは,正統派のような感じがするんでした。


 つづいては
「自然が泣いてる,ペットの糞。 袋もつ,見かけだけではいけません。」
とのことであります。

 こちらは,ペットの糞が自然を泣かす,という主張なんでした。これはもう,町内などというレベルではなく自然という大きなものが対象になっているようであります。
 確かに「自然破壊をしている」と言われると反省してしまいそうでありますね。でも動物の糞などというのはその辺に転がっている方が自然的にはいいんではあるまいか,などということも考えてしまいそうなところではあります。


 こちらも,文章は上のカンバンと同じであります。
 おそらくもともとは同じものなんでしょうけれども,犬のイラストに「×」が描かれていないんでした。

 この「×」は他のカンバンにはすべてついているものでありますけれども,ここのカンバンにだけ無いんでありますね。誰かが消してしまったのか最初からなかったのか。
 カンバンによって「×」の位置が微妙に異なるので,「×」は全部あとから描かれたもので,このカンバンだけ描き忘れたのかもしれませんが。

 あるいは,位置的にここは田んぼわきのようなので,「まぁ〜,そんなに厳禁ってほどでもないんだけどねぇ〜。肥料になるかもしれんし」という大らかな態度表明だったりするんでありましょうか。そんなこともないか。

 しかし,この「×」がないと犬のシルエット全体を注意して見てしまうでありますね。この股間のイチモツのようなシルエットが少々気になってしまうところではあります。


 こちらは
「犬の糞,我が子と同じ,跡始末。犬の糞,跡始末きれいに飼い主さん。」
ということなんでした。

 まぁ,流し読みすると意味合いはわかるような気がするわけですけれども,あらためてじっくりと読んでみるとちょっと「?」と思ってしまう文章なんでした。
「犬の糞,我が子と同じ,跡始末」というのは,何が「我が子と同じ」なんでありましょうか。

「犬」は「我が子と同じ家族」なのだから,そのあと始末はきちんとしましょう,ということなのか。
「犬の糞」を「我が子」だと思ってほおずりしなさい,ということなのか。
 犬には家で出た残飯を食べさせているので「犬の糞」は「我が子のウンコ」と成分は同じはずである,という考察なのか。
「我が子」なんていうのは可愛くもない「犬の糞のような存在」であるから虐待して始末しようゼ,という極悪非道のススメなのか。
 まぁ,そんなことはないと思いますけれども。


 こちらは
「環境を美しくする,明るい町。 ペットの糞,始末するのが当然よ。」
とのことであります。

「ペットの糞,始末するのが当然よ」と,なんだか急にフランクな感じになっております。
 あるいは「月に代わってお仕置きよ」的な高圧的な物言いなんでありましょうか。最後に「おほほほほ」とか入れておくとより良かったかもしれませんが。
「ペットの糞,きちんと始末おし!!」とか,そういう言われ方をする方がウレシイ人もいたりするかもしれないし。


 そしてついに鳥居の登場であります。
「バチが当たりますよ!!」
とズバリ言われてしまうと,よほど神をもおそれぬ人でないとビビってしまいそうでありますね。鳥居が3つも出てきてるし。

 そのうち「地獄に落ちるわよ!!」とかエスカレートしていったりするんでありましょうか。逆にそんな言われ方だと反発したくなってしまうかもしれませんが。

 それにしても,ベースが同じで内容が様々というのも,なかなかオモシロい効果を生むものでありますね。そういうのを狙ってカンバン群を作成したのかどうかはわかりませんけれども。
 実際カンバンを見る人の性格も様々であって,控え目に訴えかけられる方が効果的だったり高飛車に命令された方が効き目があったりすると思われるわけで,イロイロなカンバンがあるというのはいいことなのかもしれないんでした。

 今回の「犬のフン放置厳禁!!」はすべて新潟市中央区・女池3あたり。

※今回6種類のカンバンを紹介しましたけれども,この道を歩いたときに出現するカンバンの順番は実際とは異なります。
 以前あった「松園物件」「松園物件2」的に,他にも色々な同種のカンバンがあったりするかもしれないので,さらに探してみるのもよいかもしれないんでした。