マツゾノ物件
車も多く通る比較的広めな道路を歩いていて,小さな路地を横切ろうとしたとき,このカンバンが目に入ったわけでした。
「危ないと思った瞬間 飛び込もう 皆を守るよ松園は」
これを読んで,まず我が目を疑い,そしてちょっと考え込んでしまったんでした。
なんせ,交差点で「危ないと思った瞬間」に「飛び込」んでしまったら,それはもうこの世とオサラバしなければならないとしか思えないわけで,それをこんなに目立つカンバンとして立てているというのはどういうことであろうかと,思ってしまったわけでした。
そのあとに「皆を守るよ松園は」とあるので,おそらくはこの周辺に「松園さん」という正義のヒーローがいて,車が来ている道路に飛び込んでも間一髪で守ってくれるのかもしれないでありますね。
しかしだからと言って「飛び込もう」はないんではあるまいか。どうせなら道路に飛び込まないようにしてくれるのが真のヒーローなんではあるまいか。などと思うんでした。
まぁでも,テレビに出てくるようなヒーローも誰かが絶体絶命にならなければ出てきてくれないから,それがヒーローというものなのかもしれませんが。絶体絶命という状況がなければ,ヒーローというのは存在しないのかもしれない。
「松園さん」も,危機一髪的な状況がなければ変身できないので,あえて危機的状況を作るために「飛び込もう」と言っているのかもしれないんでした。
ということではもちろんなくて,この辺の地名が「松園」なんでした。カンバン主は「松園自治会自警部」だし。
そしておそらく「不審者などがいて危険を感じたら,近くの家に飛び込んで助けを求めましょう。この松園は,地区全体で子どもたちを守りますよ」ということを,このカンバンは言っているんであろうと思われるんでした。
しかし私がその考えに到達するために10秒くらいかかったわけで,それまで「????」というのが頭の上に飛び交っていたのは事実であります。いやもっと長かったかもしれない。それだけ,一目見ただけではわからないカンバンなんでした。
なにはともあれ,素直な子どもがこのカンバンを見て道路に飛び込んでしまわないようにお祈りいたします。
いや本当にこの辺には正義のヒーロー「松園さん」がいるのかもしれませんが。そしてキョロキョロしながら街を徘徊しているような不審者はやっつけられてしまうのかもしれませんが。くわばらくわばら。
こちらも,そのすぐそばにあるカンバンであります。
「無法者 一一〇番へ 網ぎます」
まぁ,「無法者」「一一〇番」という単語で,だいたいの意味はわかるような気がするわけですけれども。
わけですけれども,よく読んでみると最後の「網ぎます」というのがわからないんでした。
あみぎます…? もうぎます…? ねっとぎます…?
私の漢字能力が低いだけで,これは一般的な言葉なんでありましょうか。あるいは「ぎ」は「ざ」の誤植であって,「一網打尽にする」という意味の奥様言葉「網ざます」なんでありましょうか。違うような気はしますが。
やはりここでもしばらくカンバンを見つめて「????」を頭の上に出しながらたたずんでいたわけですけれども,そんなことをしていると不審者と思われ,無法者と同様に一一〇番へ網がれてしまうかもしれないと思い,早々にその場を立ち去ったわけでした。
「網ぎます」が文法的にどういう活用をするのかわかりませんけれども。
さらにこちら。
「交番と直接 繋がっている街」
そうですか。直接つながっていますか。まさか,つながれているわけではないのだろうなぁ。街ぐるみで何か悪いことをして,街自体がひもで交番につながれている街。
もちろんそういうことではなくて,街と交番が一体となって住民を守っていますよ,安心な街なんですよ,ということなんでしょうけれども。
交番と直接繋がっているからこそ,無法者は網がれたりするのだろうし。
さらにもうひとつ,松園自治会自警部さんのカンバンであります。
「昼でも夜でも 誰かの目が光ってる」
これはまぁ,この中では一番意味としてわかるかな,という気もするわけですけれども,二通りの意味にとれるでありますね。
「この地区ではいつも誰かが見ているから,誰も悪いことはできないので安心して暮らしましょう」
あるいは
「不審者はいつどこで見ているかわからないので,注意して暮らしましょう」
おそらくは前者のような気がするわけですけれども,目を光らすのは「誰か」でいいのかという気もするんでした。どうせなら,自警部の皆さんが目を光らせてほしいところではあります。まぁ,住民全員にそういう意識を持ってもらうことが自警部さんの仕事なんでしょうけれども。
あるいは,文字通り「目が光ってる」のかもしれないでありますね。
この地区の住民は,一定時間ごとに誰かの目が光りだすと。誰の目が光りだすのかは,神のみぞ知る。
昼はともかく,夜に光り出したらちょっと不気味であります。いや,懐中電灯いらずで,本人は便利なのか?
まぁいろいろと妄想してきましたけれども,決して揶揄しているわけではないんであります。これだけ一生懸命な自治会さんもあるまいと,感心しているわけなんでした。
なにはともあれ,松園自治会自警部さんには今後もがんばっていただきたいものであります。これからもオモシロいカンバンを作,いや地域の防犯意識を高めるために。
今回の物件は4枚の写真を使っていますけれども,実はまだ10枚ほどあるんでした。松園地区を歩くと,いたるところにこの黄色と赤のカンバンがあって,ユニークなことが書いてあるんでありますね。遠くから黄色と赤を見つけると,「こんどは何が書いてあるんだろう」と,ワクワクしながら近づいていけるんでした。
お近くの路上観察者のみなさんは(いるのか?),ぜひこの辺を歩いてカンバンを探してもらいたいものであります。私もまだすべての路地を歩いたわけではないので,また歩いてみようと思っているわけでした。
「飛び込もう」「網ぎます」「繋がっている」「誰かの目」はすべて新潟市東区・松園1,2あたり。