ワンポイントアドバイス 

8 演奏の準備

 発表会等で人前で演奏する時に、どうしたらあがらずに家で練習している時と同じように弾けるのか。そのための心構えとか準備については時々お話ししていますが、生徒の皆さん全員にしっかり伝わってはいないと思うので、ここに取り上げました。私も今でこそあまりあがらなくなりましたが、本番では練習のときのようにはなかなか弾けません。しかし準備をしっかりしておけば、多少あがったにしてもまあ何とかなりますし、なにより気が楽です。備えあれば憂いなし。ではいったいどんな準備をすればよいのかお話ししましょう。
 まず当たり前のことですが、その曲を十分弾き込むことが必要です。発表会では楽譜を見ながら弾いてもよいことにしていますが、本当は暗譜が望ましいです。自然に暗譜してしまうほど回数多く練習し、暗譜後もさらに十分弾き込むべきでしょう。ではどのくらい練習すれば十分弾き込んだことになるのでしょう。何百回?何千回? これは一概に何回とか言えませんが、結局自分自身が「十分練習したんだという自信」を持てる迄ということになるでしょう。
 次に失敗等のアクシデントに対する対処法を事前に考えておくという事です。家で練習していて、間違えたり止まったりした時に、そこまで弾いたことを無いことにして最初からやり直すのはよいことではありません。本番ではそういうわけには行かないのですから、普段から本番のつもりで練習し、一旦始めたからには途中で間違えてもその音を弾き直さずに次の音を弾いていく、流れを止めずに最後まで行きましょう。どうしても止まってしまった時は、その場所に応じたキリのいい場所に(あらかじめ数カ所決めておく)サッととんで、すぐに演奏を続けるのです。その曲を知らない聴衆は間違えに気づかなかったりします。
 もうだいぶ前の話ですが、ある有名なギタリストが新潟で演奏会をしたとき、バリオス作曲のある曲を演奏中、突然でたらめの演奏になってしまいました。そしてその状態はかなり長い時間続きました。ついにはその曲のメロディーが現われ曲を終えることができたのですが、途中は全くのでたらめを延々と弾いていたのです。当時その曲はあまり知られていない曲だったので、ほとんどの聴衆がその大失敗に気づかなかったようです。私は曲を知っていたので唖然として聴いていましたが、そのプロ魂には感心したものです。
 次にあがらないための本番での気持ちの持ち方ですが、失敗を恐れて心配しているとあがりやすくなります。「間違えたら間違えたでいいや」と開き直って、気楽な気持ちで臨みましょう。それから演奏前にアルコールを少し飲んだらあがらないのではと考える人がいますが、集中力が無くなってしまうのではないでしょうか。そもそもアルコールに頼ることじたい気持ちが負けてしまっているのです。緊張をほぐす飲み物としては、TV番組の情報によると、温かいウーロン茶かミルクココアが良いようです。
 とはいえ本番の演奏ではある程度の緊張感は必要なのです。それは自分の能力を最大限に発揮するための条件となります。たとえば練習のときに10回のうち3回しか上手く弾けないとします。それならその3回のところを本番で出せばよいのであって、そのためには「ここぞ」という気持、集中力が必要でしょう。気持ちを引き締める程度の良い意味での緊張感です。
 ところで当教室ホームページの談話室の中で、「将来の目標として、小さくても良いから自分のコンサートを開きたい。」と言う発言が有りました。こういう目標を持つことはとても良いことで、生き甲斐となるし、是非その夢を実現させてもらいたいものです。このようなコンサートのための準備となると、今まで述べたこと以外にもいろいろと必要な事があるし、いっそうの厳しさも求められます。そのノウハウはここでは述べませんが、それが必要な人にはその時にしっかり伝授いたします。


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