ワンポイントアドバイス 

6 中古ギター 

 以前は教室の中で中古ギターの使い回しをしたこともありました。つまりたとえばAさんが50万円のギターを買うことになり、それまで使っていた30万円のギターをBさんに15万円くらいで買ってもらうという具合に。生徒の皆さんに出来るだけ早く良い楽器を使ってもらうことは、上達のためにも必要なことだし、中古ギターの斡旋は良いことだと思っていました。ところが後になってこれはあまり良いことではないと気づいたのです。
 いくつかの理由がありますが、第1には中古ギターというものはそれを使っていた人の色に染まるので、他の人が使っても相性が合えば良いが、そうでない場合が多いのです。
 ギターを弾くという事について、たとえば「a・b・c・d・e」の五つの要素があるとします。演奏家等プロのギタリストは五つの要素すべてを持ってギターを弾くことが出来るとしても、普通の人はたとえばAさんは「a・b・c」の三つの要素でしか演奏しない、またBさんは同じ三つでも「c・d・e」の要素で弾いている。そうするとAさんの使っていたギターは「a・b・c」の要素は良いが「d・e」の要素が出にくい楽器になっているのです。その楽器をBさんが弾いた場合、「c」の要素しか引き出せないということになります。プロのギタリストが使っていたギターはその点問題ないですが、そういう楽器はほとんど回ってきません。やはりギターは新品から自分の持っている要素で弾き込み、上達とともに他の要素も加えながら、育てていくのが良いようです。
 また製作技術も進歩しますので、同じ製作家の楽器でも新しい物の方が良くなっているということもあります。
 第2の理由ですが、「新しくギターを買っても今までの楽器はそれを使う場合が出てくるので、残しておいた方が良い」ということです。ギターはほぼ一生涯使えますが長く使っていると、指板が減ったり、フレットがへこんだり、あるいはぶつけてしまったりして修理が必要になる時があります。(エアコンの風が直接あたるところに長くおくと表面板が割れてしまったりするので注意) 修理に出して戻ってくるまで1カ月以上かかる事は珍しくないので、その間に使う。また小さな子供がいるところで弾く場合、寄ってくる子供にギターを触らせないのはかわいそうなので、古い楽器を使う。大人でも酔っ払ったお客などに貸す場合も古いギターがあると安心。
 他にも理由を挙げられるのですが省略し、関連してもう一つだけ言いますと、習い事も長くやっていると波があって、時にはやになってしまう事もあるでしょう。この時期を乗り越えられればまた長く続けられるのですが、中古ギターで習い始めた人は、新品を買って始めた人と比べて、やめてしまう確率が高いのです。ですからサークルなどでギターを持っていない新人が入ってきた場合、家にギターが余っているからと言って譲ったりする様なことはしないようにお願いします。余っているギターがあったら親戚や知人などにあげてください。まだギターに興味を持っていない人に対してはきっかけになるので、それはそれで有意義なことです。


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