ワンポイントアドバイス 

11 新曲の練習法

 新たに曲に取り組む時の練習の仕方について書いてみます。
 独学の人などがよくやっている練習方法は次のようなものでしょう。最初の一〜二小節だけを、繰り返し覚えるまで練習する。次に次の一〜二小節を練習する。そしてついに最後の小節迄行った時には暗譜も出来ている。
 しかしこれはあまりよい方法ではありません。暗譜は早く出来ますが、楽譜を読む力がつきません。ですからそういう人に多いのは、かなり難しい独奏曲をバ リバリ弾けるのだが、簡単な単音のメロディーであっても初見では全然弾けない(音は出せるが正確な拍がとれない)。ギター仲間が集まり、「この三重奏、簡 単そうだからちょっと合わせてみようよ。」となった時に対応できません。
 お勧めのやり方は、かなりゆっくりと「拍を意識しながら」初見演奏をする。音を探しながらなので等間隔に拍を打てなくても良い、指使いがわかるまでは時 間は止まって良い。そして八小節とか十六小節とか、区切りの良いところまで行ったら、それを繰り返し練習するのはかまいません。この方法ですと、楽譜の音 符をギターの指板の位置を経由して音にしていく作業を常にしているので、楽譜を読む力がつく(初見演奏に強くなる)のです。そのかわり暗譜するのは遅くな ります。暗譜を早くするコツというのもあると思いますが、すぐに暗譜しようと思わずに、練習(初見演奏)を繰り返すことにより自然に覚えてしまうのを待 つ、と考えた方がいいかもしれません。
 次に大切なことですが、練習が進んでスムーズに弾けるようになってくると、より速めのテンポで練習したくなるものですが、実はそれは合理的な練習ではあ りません。ゆっくりしたテンポでの練習が大切で、余裕を持っていろいろなこと(音楽的にも技術的にも)を考えながら練習し、「こういうゆっくりな曲なの だ」と思って曲を完成させる。その後テンポをメトロノームでチェックしながら、かなり時間をかけて徐々に速くしていくのです。うまく行かないと思ったらテ ンポを落とす。難しい箇所は取り出してゆっくり部分練習をする。最終的にはもちろんメトロノーム無しで練習します。
 速めのテンポばかりの練習だと正確な技術は身につかず、本当の完成には至らずいつまでも自信が持てません。「急がば回れ」で、ゆっくりしたテンポでの練習(土台作り)をたっぷりしましょう。腱鞘炎の予防のためにもなります。
 最後に、拍を意識した練習は単に初見演奏に強くなるためばかりでなく、音楽的に魅力のある演奏をするためにも重要であることを付け加えます。


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