サセルナ物件

サセルナ物件


 まずあやまっておきましょう。昼休み中など,ご飯食べながら見ている人いましたら,ゴメン。

 そんなわけで,犬を飼う場合に飼い主として苦労しなければならないのが,散歩中のフンの処理であろうと思われるんでした。
 私は,ある程度ソレが道端に転がっていてもいいんではあるまいかと思う方なんだけれども,あんまりゴロゴロ転がっててもナンだし,自分の家の前に放置されていたら腹もたつだろうとも思うんでした。
 実際に私が借りている駐車場の車の前にソレがあることも割とあって,そういうときは飼い主の神経を疑ったりもしてしまうわけでした。

 ということで,写真の物件。文面はオーソドックスでありますけれども,木の板といい,その手作り感がよろしいでありますね。
 最初は「犬のフン させるな」だったところに,あとから「を」を付け加えたような気がするわけですけれども,その「を」を「犬のフン」の下につけるか「させるな」の上につけるかというのをちょっと迷ったんではないか,という感じもして微笑ましいんでした。


 こちらはもう,毅然としております。  いきなり「告ぐ」。そして「道路は犬に糞をさせる場所でない」と理屈を説いておいて,その意味がわからないという人のために,トドメとして「(サセルナ)」。さすが町内会長というところでありましょうか。

「糞」を読めない人のために「(フン)」というフリガナをふるという優しさも見せております。あるいは,「下品な読み方をしちゃいけませんよ」という意味合いでのフリガナなんでありましょうか。
(参考:教育上物件


 こちらは,言い方がていねいになっておりますけれども,要求されているのは「小便をさせないでください」であって,上2件よりも条件が厳しくなっているんでした。

「大」の方はいいのかという疑問もありますが。関係ないけれども,犬というのは大小同時に出てしまわないもんなんでありましょうか。私の場合は,小を出さずに大だけ出すというのが困難なのだけど,私だけなのか? それはともかく。

 まぁ確かに,家の前が黄色くなっているのをみるのもイヤなもんでありますけれども,犬にガマンさせるというのも難しいだろうし,大の方と違って,あとから回収するというのも難しそうではあります。
 今は便利なグッズもあるのかもしれませんが。うちはもう25年くらい犬を飼ってないのでわからないんでした。


 こちらは達筆で言い方もていねいであって,「お願い」すらされております。しかし,ていねいではありますけれども,要求はさらに厳しく「犬を入れないでください」なんでした。

 でも,犬としてはこういう駐車場に入りたくなるのもわかるような気がするでありますね。最近は道路も全部舗装されていて,土の地面というものがないわけで,庭のない家なんかでは,自分の小屋の周りでさえ土がない場合もあったりするようだし。
 私の借りてる駐車場も舗装されていない青空駐車場だから,犬としては入りたくなるスペースなのかもしれない。

 それでも,この福来軒さんにしてみれば切実な問題であるようで,どうしても駐車場に犬を入れたくないようなんでした。カンバンの本来の内容である「無断駐車厳禁」を隠してまで「お願い」されているわけで,飼い主としては,犬に理解を求めるしかないようなんでありました。

 また,「無断駐」の字が隠れていることにより,「福来軒駐車場 車厳禁」とも読めてしまうので,「車を停めることのできない駐車場」にもなってしまっているんでした。

 しかし,やはり「犬のフン」は「ゴミ捨て場」と並んでカンバンの主役であります。作成者の情念というのが,そしてその人の容姿すらも見えてくるような気がしてくるわけなんでした。

「犬のフンをさせるな」は水原町・中央町1あたり。
 作者:小太りで頭もちょっと薄い,いつもランニングシャツを着ている無口なオヤジ。
「(サセルナ)」は新潟市・小金町2あたり。
 作者:メガネをかけた,やせて神経質そうでちょっと声のカン高い町内会長。
「小便をさせないで」は水原町・中央町1あたり。
 作者:たまに和服も着たりする,割とカカア天下の背の高い奥さん。
「お願いします」は村上市・田端町あたり。
 最近は中華ナベがちょっと重く感じるようになってきた,「メニューは手書き」がモットーの料理人。

 ※もちろん,作者像は私が勝手に想像したものであり,実際の作者とは異なります。