くわれ物件



 日本人の美感として,不完全なものや欠けたものを好むというのがあるわけでありますけれども,欠けていればいいというもんでもないのだろうと思われるんでした。

 そんなわけで上の物件。
 右側にある丸い蓋の縁石部分が,左側の大きな「METER」蓋にバクリと食われてしまっているような感じなんでした。
 すんでのところで尻尾(なのか?)だけ食われて九死に一生を得たところみたいであります。尻尾を食われたカブトガニっぽい感じも受けるでありますね。そうでもないか。

 しかし,なぜこんな形になるのか。縁石部分というのは蓋の中には関係ないのかもしれないですけれども,それなら最初から縁石作らなければいいようなものなのに。そういうものでもないのかどうか。

 そしてこの切れ目が舗装タイルの境目とまったく無関係であるところも,なんだか妙な感じがする一因だと思われるんでした。
 なにかデザイン的な意図があるのか。

 そう考えると,「METER」の下の取っ手棒を口,右の丸蓋を左眼としてみるとちょっとカワイイような気がしてくるところであります。カワイくないか。


 こちらも蓋でありますけれども,もう真ん中から引き戸にひかれてしまっているんでした。
 顔面をひかれて「アダダダダ」と言っているかのようであります。

 人んちなので内側の様子を見るのは遠慮したわけでありますけれども,この蓋は機能するのか,引き戸のレールなどはどうなっているのか,そもそもなぜここに戸があるのか,興味深いところなんでした。
 中には別の蓋も複数あるようなので,戸はあっても外の扱いなのかもしれませんけれども。


 こちらはノブ付きのドアでありますけれども,見事にナナメであります。「律儀物件」に入れてもいいものでありますね。

 おそらくは階段下のスペースを物置かなにかに使っているんだろうと思われるわけでありますけれども,中に入ったりするのはタイヘンそうであります。

 ノブの位置も低いので,入ろうとすると腰をやられちゃうんではないかと,いらぬ心配をしてしまうところなんでした。
 そういうのをリアルに想像できてしまうあたり,歳はとりたくないものであります。


 オマケ。居酒屋「あじおんち」さんであります。

 お店としてどうなのかという気もするところでありますけれども,仮に店主が味音痴であったとしても提供される料理がおいしければOKでありますね。
 むしろ,自らが味音痴であることを理解していれば,自分がマズイと思ったものを出せばいいので安心なのかもしれないんでした。そういうものでもないか。

 しかし,音に不自由な人が「音痴」で運動に不自由な人が「運痴」なのに,味に不自由な人が「味音痴」なのはどうなのか。「ミンチ」でいいんではあるまいか。ダメか。

 そもそもが,こちらはホントに「味音痴」なのかという気もするところであります。
 マスオさんの親戚のアジオさんが自宅でやってるお店の「アジオんち」だったりはしないか。
 この地域では地域ごとの紛争が起きていて,ここは青軍の基地である「あおじんち」なんではないのか。
 あっちの方にジオン軍の拠点があるという「あっちじおん」という秘密看板だったりしないか。(促音の「っ」は消してある。秘密なので)
 久しぶりに知り合いに会いたいという「知人会おう」という伝言だったりしないか。
 などといらんことをあれこれと考えてしまうわけでした。

「食われ蓋」は新潟市中央区・西堀前通7あたり。
「ひかれ蓋」は柏崎市・西本町1あたり。
「ななめ扉」は新潟市西蒲区・巻あたり。
「あじおんち」は加茂市・上町あたり。