トラップ物件
さるお宅の呼び鈴のボタンであります。おそらくは
「勧誘・セールスお断り」
と書かれていて,さらに「お断り」は重要なので赤で書かれていたんではないかと思われるんでした。
しかし,今までにも数多く類似の物件があったように,赤い字は褪色して消えてしまうわけであります。大事なことを強調しようとするが故に消えてしまうという,皮肉な罠。
こちらの物件でも「お断り」の文字が消えてしまうことによって,逆に「勧誘・セールスの方専用ボタン」のようになってしまっているんでした。
勧誘・セールスの人たちは,これを見つけたら
「ああ。いつも害虫でも見るかのように白い目で見られ邪険にあつかわれ塩をまかれたりしているのに,このお宅には我々専用の呼び鈴まである。ありがたやありがたや」
と涙を流しながらボタンを押すかもしれないでありますね。
いや,でも本当に「お断り」ではなくて「大歓迎」と書かれていたのかもしれませんが。よその人としゃべるのが生きがいで,そのためなら高額な商品を大量に買ってもいいと考えている資産家とか。
あるいは「押したら半殺し」とか書かれていて,家の中では武器を手にした家人が勧誘・セールスの来るのをてぐすね引いて待ってるのかもしれない。
入ってしまったらもう勧誘・セールスは半殺しに。抗議しても,家人は
「おや。おかしいな。半殺しと書いておいたはずなんだがなぁ〜。ひひひ」
と言って,とりあってくれないかもしれないんでした。あわれ,勧誘・セールスは罠にかかった小鳥のごとし。
少し前に「シャッター物件」というのがあって,引き手がたくさんついたシャッターを紹介していたわけでありますけれども,これも似た感じであります。
これはさらに数が多く,シャッター自体の大きさもかなり大きいんでした。
ただ,引き手になっているわけではなくて,シャッター本体よりも薄い板がたくさんついている感じ。穴をあけようと思えばあくようでもあります。実際,一番左上は穴があいているようなんでした。
これはやはり引き手をつけるのが目的ではなくて,シャッターを軽くするための工夫なんでありましょうか。確かに,これだけ大きなシャッターだと重量も相当なものになるはずであります。
もっとも,手でガラガラとあけるわけでもないんでしょうけれども。でも機械とか道具であけるとしても,重量は軽い方がいいだろうし。
あるいは,この穴がシャッターをあけるための鍵になっていたりするんでありましょうか。
一定の順番で穴にナイフを入れていくと,シャッターが開くのかもしれない。
でも間違った穴にナイフを刺してしまうと,黒い口ひげをはやした巨大な海賊が「危機一髪!」と言いながら空へ飛び出していって負けになるのかもしれないんでした。
何を言っているのか。
こちらは,道路工事(正確にはちがうけど)の現場であります。本来の道幅および歩道が制限されているんでした。
歩行者は狭い通路を通らないといけないし,道路に面していて入りづらくなっているお店なんかはカンバンを出して所在をアピールしないといけないわけでした。
そういうお店のカンバンは,通常は「○○(店名)はこちらです」くらいのことが書いてあるだけのような気がするわけでありますけれども,こちらのカンバンでは
「この先 T&C学習塾 新入生受付中」
と,宣伝文句まで書かれているんでした。こういうのは,好きな文句を書かせてくれるんでありましょうか。
歩行者は矢印に誘導されて左側へ来るわけで,その先で学習塾が新入生受付中であるとなれば,これは無意識のうちに入塾してしまいそうであります。ふと気づくと,着席して先生の話を聴いていることになるかもしれないんでした。追い込み漁というかヤナ漁のようであります。
学習塾では,なぜここにいるのかわからないまま,大勢の老若男女が今日も机に向かっているんでありましょうか。
これも何を言っているのか。
「お断り」は新潟市東区・山木戸1あたり。
「黒ひげ」は新潟市東区・牡丹山5あたり。
「追込み」は新潟市東区・中山5あたり。