経年物件
おなじみの褪色系であります。強調すべき部分に赤を使ってしまったがために,年数を経るにしたがって消えていってしまったものでありますね。
一番重要である部分がわからなくなってしまうという,ある意味わびさびを感じてしまうカテゴリーであります。
そんなわけで,上の物件。
2枚のプレートが門扉に貼られているわけでありますけれども,おそらくはどちらも同じ内容で「猛犬に注意」と書かれていたと思われるんでした。
しかし,片方のプレートは「猛犬」,もう一方は「注意」の文字が赤かったようであります。
その部分が消えてしまったわけでありますけれども,結果として2枚ひと組で「猛犬に注意」という,伝えたいことは十分に伝わる形になっているんでした。
「に」がカブってしまっているのが少し残念ではありますが。
このお宅のご主人,褪色を見越して2枚のプレートを選択したんでありましょうか。だとしたら相当な人物であるような気がするでありますね。
家族には馬鹿にされたかもしれないですが。
妻「もう。お父さんったら同じプレート2枚も買ってきちゃって。無駄なんだから」
娘「そうよ。こんなの2枚もつけてたら近所に馬鹿にされるじゃないの!恥ずかしい!」
主「でも,ごらんよ。赤い文字が違うんだよ…」
妻「それがどうしたのよ。書いてあることは同じでしょ!」
娘「あーもう,やだ。こんなバカオヤジ!」
主「でも,ね。色がちがうとね…」
妻「もういいわよ。買ってきたの捨てるわけにもいかないんだから,さっさと貼ってきなさいよ!」
主「ああ,うん…」
数年後ご主人は急な病で他界するのだけれども,葬儀から数日が経って母娘がふとプレートを見ると,2枚のプレートが消えた赤い文字を補完しあっているのに気づく。
娘「お父さん,ここまで考えていたのね…」
妻「うう。あなた…。あなたはいつもそうやって,わたしの足りない部分を補ってくれていたのね…。わたしはあなたに,何かしてあげられていたのかしら…」
犬「うおぉぉぉーん」
見上げる空に浮かぶご主人の笑顔。END。
※もちろん,これは私の妄想であります。ご主人はお元気であろうと思われますし,奥さんも娘さんもお父さんを馬鹿にしていないと思われます。
家族構成もよくわかりませんが。たぶん,犬はいるような気がします。
こちらは,よくみかける「子供の飛び出し注意」のカンバンであります。
おそらく左側の大きな空欄には赤く「注意」と書かれていたんではないかと思われるんでした。
それが消えてしまったわけでありますけれども,見方によってはこれは注意をうながすカンバンではなくてアート作品であるような気もするんでした。
つまりは「子供の飛び出し」というタイトルのイラストを飾っているだけなんではないかと思えてきてしまったわけでした。
しかし,年を経て文字が消えてしまったわけで,このプレートを必要とした子どももすでに大人になっているのかもしれないでありますね。
だからむしろ「子供」の部分が消えるようにしておいて,成長にともなって「中学生」「高校生」「大学生」「新入社員」「係長」…「老人」と変えていくのがいいかもしれない。
途中,突然「リストラ無職」になったりすると,ホントに飛び出してきたりするかもしれないので要注意でありますけれども。
オマケ。
これは相当前に物件にしたカンバンの,その後であります。
その相当前の物件(不用物件)の写真がこちら。
1998年の物件なので,もう13年前であります。
当時はまだ写真をアップロードするのも容量的な制限があったので極力サイズを小さくしようとしていたり苦労がしのばれるところでありますね。
今でも写真の容量が小さいのはその頃からの習性であります。
13年前の段階でもすでになんだかボロボロな感じのカンバンだったわけでありますけれども,今はさらに文字が消えてしまっているんでした。
「ワックス」とか「一年間保証」とか,赤い文字がやっぱり消えるんでありますね。
でも「ピッカピッカ」はいつまでも変わらないあたりが,なんだかオモシロいところであります。
「猛犬に」は新潟市中央区・米山4あたり。
「子供の」は新潟市江南区・鵜ノ子1あたり。
「ピッカ」は新潟市中央区・新和1あたり。