小ネタ物件82


 さて,小ネタコーナーであります。物件としてはちょっとどうかな? と思うんだけれども,なんだか憎めないようなヤツらを集めてお送りします。本物件とどこが違うんだと思われるかもしれませんが,その辺は「なんとなく」なんでした。

 昔撮った写真は,見ればだいたいどこで撮ったかとかそのときの情景を思い出すことができ…ていたのだけれども,最近は思い出せないこともあるのだよな。
 それどころか,その写真を物件にしたかどうかも思い出せなかったりする。んー,トシなのか?



 ビルの裏手にある駐輪場のカンバンであります。
「リクルート専用駐輪場 一般の方は使用出来ません。」
とのことなんでした。

「リクルート」というのが就職活動をあらわす言葉として認知されて久しいわけでありますけれども,もちろん,あの大きな企業の名前でもあるんでした。

 そうすると,このカンバンの場合はどうなのか。就職活動をしている学生さん専用の駐輪場であるのかリクルートの社員さん専用の駐輪場であるのかと思ってしまうわけでした。

 まぁ,実際はこのビルにリクルート新潟支店があるようなので,会社としての「リクルート」であると思われるわけですけれども,リクルートへリクルートする人のための駐車場であるという可能性も捨てきれないような気がするんでした。

 また,辞書的な意味では「リクルート」は「新兵・新入社員」あたりを指す言葉らしいので,どこかの無関係の企業の新人さんとか,どこかの国の新兵さんがミサイルをくくり付けた自転車を乗りつけて停めてもよかったりするんでありましょうか。

 新潟市中央区。


「清水歯科医院」さんの電柱広告であります。ごく普通の電柱広告でありますけれども,その「歯」という文字のど真ん中に,例の「電柱足場ボルト」がグッサリと突き刺さっているんでした。

 これはなんだか痛そうであります。奥歯にあいたデカい虫歯穴に五寸釘を差し入れてグリグリされているような情景を想像してしまうんでした。
 歯医者の椅子に座ったら椅子からギュイーンとベルトが出てきて手足と頭部を拘束され,強制的に口を開く器具で口を大きく開けられたところへ血走った目の歯医者が現れて,手に持った五寸釘を歯の中でグリグリしながら「痛い?ねえ,ここ痛い? 痛かったら手を上げてね。上げられないだろうけど。うひひひひ」などと責めたてられるのかもしれないんでした。

 もちろんこれは私の妄想であり,実際の清水歯科医院さんはそのような歯医者さんではないと思われるわけであります。たぶん。
 と書いたところで,これ以前にやったような気もしないではないなぁと思ったりしたわけですけれども,そこまで憶えている人もいなかろうと思ってそのままにしておくんでした。

 新潟市中央区。


 こちらは某家具屋さんの店先に貼られた
「ベットSALE」
のハリガミなんでした。

 まぁ,外国語の発音をカタカナにするというのは難しいわけで,「BED」を「ベッド」と書かなければならないということはないわけでした。「テレビ」「ラジオ」を「テレヴィジョン」「レイディオ」なんて書いてあったら,逆に何かの冗談みたいな感じがするし。

 とはいえ,家具屋さんだからといってこの「ベット」が本当に「ベッド」のことなのかどうかはわからないんでした。
 通常のセール以外にも「別途」にセールを行なっていますよ,という告知なのかもしれないし。
 ここのセールは当たりはずれが大きくて,「賭け」の要素が大きいですよ,ということなのかもしれないし。

 あるいは,我々シロウトが知らないだけで,家具業界では「ベット」という品物が存在するのかもしれないでありますね。
 このお店できちんとした発音で「ベットください」というと店主の表情が一変して真剣になり,「お客さん,どこでそれを…」などと言って地下にある秘密の部屋に通されて,素晴らしい「ベット」を見ることができるのかもしれないんでした。

 新潟市中央区。


 こちらは焼肉屋さんのカンバンであります。以前「間違えねえ」ということで別の物件(江戸っ子物件)にも登場しているお店でありますけれども,今回はまた違うカンバンが登場していたんでした。いわく
「焼肉 カルビ 和牛ホルモン 大腸」
とのことなんでした。

 まぁ,我々も焼肉などを食べる際にはそれがかつて生きていた生物の残骸であるということは承知しているわけでありますけれども,そういったことは極力忘れるようにして,おいしく味わわせていただいているわけでした。

 その,忘れようとしているところへ「大腸」とそのままの表現で書かれていると,どうしても想像力がよけいな方向へ働いてしまうような気がするんでした。
 生きていた牛さんが命を奪われて解体され,その臓器や肉塊を取り出したうえ火あぶりにしてベシャベシャとむさぼり食っている自分というのが,悪魔か鬼かという風に思えてくるわけでした。

 そこまで考えないにしても,「大腸」というストレートな表現はちょっと食欲を減退させるような気がするでありますね。グルメな人は,そういった言い方にこそ食欲をそそられるのかもしれませんけれども。

 まぁ「焼肉」という言葉自体も,考えてみれば相当にムゴいような感じがしますけれども,慣れというのは恐ろしいものであります。もしこの料理が最初に「焼肉」ではなくて「牛の死体焼き」という風に名前がつけられていたら,
「今日は何が食べたい?」
「うーん。牛の死体なんかいいわね」
というのが普通の会話となっていたんでありましょうか。

 新潟市中央区。