再生物件

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 これはもう,大方の人はカンバンを見た瞬間に「えっ?」と思ってしまうんではあるまいかと,思ってしまうわけでした。

 まぁ,世の中はエコロジーでありますから,なんでもリサイクルすればいいというものであるような気もしますけれども,「おじいちゃん」をリサイクルしてしまおうというのはいくらなんでも乱暴な物言いなんではあるまいかと,考えてしまうんでありますね。

 辞書によれば「リサイクル」というのは「廃物を原料として再生し再利用すること」とか「不要品を他人に提供して活用をはかること」だそうで,つまりは「おじいちゃん」を「廃物」とか「不要品」としてとらえているわけでした。

 確かに心の中では
「ああ。昔は立派でたよりになる人だったけれども今では何の役にも立たないし食費がかかるし医療費がかかるし文句は言うしすぐひがむし,どこかで修理して使えるようにしてくれたりフリマで買ってくれたりする人いないかしらねぇ…」
と思っているお嫁さんも多いのかもしれませんけれども。口にはとても出せないにしても。

 ああ。かわいそうなおじいちゃん…。

 ということではもちろんなくて,これはおそらく「おじいちゃんが経営しているリサイクルショップ」であろうと思われるんでした。
 手先の器用なおじいちゃんが,壊れた家電やら雑貨やらを引き取って修理して売ったりしているんでありますね。たぶん。よく見ると「中古家電・雑貨」と書いてあるし。よく見ないでも書いてありますが。

 しかし,この店名だけを見るとやはり「おじいちゃんをリサイクルしてくれるお店」のような気がするわけで,店名をたよりに「どうかうちのおじいちゃんを使えるようにしてください!」と言って駆け込んでくる人はいないんでありましょうか。いないか。

 あるいは,店名を「おじいちゃんのリサイタル」だと思って歌を聴きに来たりする人はいないんでありましょうか。いないか。

 あるいは,店名を「おじいちゃん乗りサイクル」だと思って老人用自転車を買いに来たりする人は…もういいか。

 なにはともあれ,そのうち本当に「おじいちゃんをリサイクルする」というビジネスが団塊の世代あたりをターゲットにして出てきそうであるような気もしてくるし,もうすでにあるのかもしれないでありますね。
 しかし,それでもリサイクルしてもらえるというのは捨てられてしまうよりはまだシアワセな方なのかもしれないなぁ,と思ったりしてしまうわけでした。
 あ。なんか社会派だ。

「おじいちゃんの」は新潟市・京王2あたり。
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