エフェクト物件

エフェクト物件



 こういった交通安全を呼びかけるイラストつきのカンバンは街でよく見かけるものでありますけれども,構図はだいたい同じであって,子どもなどの交通弱者に凶器と化した自動車がおそいかからんとしている,という図柄なんでした。

 上の物件の図柄もその例にもれていないわけで,しかもこのふたりの男の子女の子はだいぶ前の物件「ナンパ物件」のふたりと同一人物と思われ,道路で遊ぶことを生業としているんではあるまいかというフシもあるわけでした。それはともかく。

 その図柄,構図はともかくとして,この物件で特徴的なのは色が反転しているということでありますね。写真のネガ状態。子どものころに遊んだ日光写真を思わせるような感じになっているんでした。

 もちろんもともとこうだったんではなくて,年月を経るうちにこうなってしまったんだと思われるわけですが。もともとの色と思われるものが残っている部分もあるし。

 あるいはしかし,やはりこれは明確な意図があってこのように仕上げたんでありましょうか。
 漫画や映像作品なんかでは,何か衝撃的な事象が起こって時間が凍りつく,または実際に時間が止まるという場合の表現としてこの「反転」が使われることがあるような気がするんでありますね。

 つまりは,この物件の場合でも事故にあう瞬間という衝撃的な場面を,時を止めて取り出しているんではあるまいかと,思ってしまったりするわけでした。
 効果的なエフェクトかどうかはわかりませんけれども。


 よく見ないとわかりませんけれども,こちらも交通安全喚起のカンバンであります。
 道路に飛び出す子どもとフロントガラスが顔になっているトラックという図柄。この辺ではもっともよく見かけるタイプではあるまいかと思われるんでした。

 それが,黄色部分を残してあとは全て褪色してしまっているんでした。もうほとんど抽象画のようであって,「ん。このカンバン何だ?」と思ってよく見ようとしたドライバーが事故を起こすのは必至なんではないかと思ってしまうわけでした。

 あるいは,これも事故にあって意識が遠くなり,周りの景色が薄れていくという状況を表していたりするんでありましょうか。


 こちらは絵はないですけれども,やはり交通安全を呼びかける標語をかかげたカンバンなんでした。「飲んで乗る あなたの家族は 泣いている」という,まぁ文言的にはそれほど目新しくもないものでありますね。

 しかしその後半部分は字がかすれていて,「あなたの…かぞ…く…は…泣いて……る…」と,あたかもホントに泣きながら聞き取れないくらいの声でこのセリフをしぼりだし,最後には絶句してしまっているような感じをうけてしまうわけでした。うけてしまわないか。

 なにはともあれ,こういったカンバンというのはたとえ既製品の大量生産であったとしても,長い年月を経て生き残っていると微妙な味が出て,そのカンバン自体が何かしら固有のメッセージを発するようになってくるんではあるまいかと思ってしまうでありますね。思ってしまわないか。

「反転」は新潟市中央区・天明町あたり。
「黄色」は新潟市中央区・女池西2あたり。
「泣いて」は新発田市・富塚町2あたり。