選択技術授業IN長岡付属中学校

教材として確実に定着、MR

 新潟大学付属長岡中学校がモデルロケットを授業の教材に取り入れてから5年。今年も新3年生 が約半年をかけて技術の授業で様々な機体製作に取り組んでいる。生徒は週一回の選択技術がとて も楽しみというほど、ユニークな授業で新聞やTVなどの取材が相次いだ。夏休みまでキットを使 って基本的な原理・製作・安全な打上手順を学習し、それ以後十一月の北信越大会に向けて創作設 計製作に取り組む。創作設計については生徒の自由な発想を出来るだけ活かそうという方針を取っ ていることもあり、専門的具体的な指導が必要なため要請に応じてHRCから非常勤講師を派遣し ている。全国の高校・中学から同校の授業に対する問い合わせ、資料請求があり、確実に教材とし ての普及が進んでいる。

授業の概要

渡辺幸彦(新大付属長岡中学校教諭 理科・技術科担当)

キットで入門

モデルロケットに出会ったのは5年前の技科大祭。長岡中に赴任したばかりで、何かイベントが あるごとに、新しい教材を求めて尋ね歩いていました。ロボットコンテストを目当てに行ったので すが、航空部の展示でモデルロケットを見てこれだと思いました。さっそく市内の販売店コクピッ トを教えてもらって行ったときに、新潟自然科学館の子供たちを連れてきていた協会会員を店主か ら紹介されました。話を聞くと丁度タイミング良く日本でも教材として使えないか、私的に研究し ている最中だということでした。資料をもらうと材料も、未実施ながら教育ソフトも以外とそろっ ていそうな感じだったので、さっそく選択技術に取り入れることにしました。初めの年は市販キッ トのみの製作。2年目からはキットのあとオリジナルの設計製作にも取り組ませています。週1時 間しかない授業なのでモデルロケットは約半年、十五〜二十時限ほどやっています。
大学付属ということで教育研究校的な中学校ということもあるのでしょうが、周囲の理解もあり、 導入に問題はほとんど有りませんでした。安全面についても市販キットであればまったく問題は無 いし、オリジナルも設計段階や打ち上げ前のチェックをしっかりすることで解決出来ます。まあ失 敗も勉強ですから、派手な失敗もそのまま経験させてやりたいのですが、打ち上げとなると必ずど こかが取材に来ていましたので・・・・。

パソコンで設計

当校では「自ら学び続ける生徒」ということを研究テーマとしていて、オリジナルロケットの設 計製作などはピッタリです。構想企画・設計計算・製図・コンピュータCAD・材料調達・製作・ 実験・測定・データ処理・考察・改良と技術科に必要なおおよその工程があって、それを自分で管 理しながら進める、そういったことが楽しみながら出来るので魅力的な素材です。 
私はキットくらいしか作ったことは無いのですが生徒は実に色々な発想をし、教師がそれについて 行けないので生徒自身がどんどん色んな勉強をして問題点を解決していきます。基本線はひとりひ   とりがやりたいことをそのままにやらせていますから、ひとりひとり、毎年違うその子らしい作品 が生まれています。何回か段階ごとにタイミングを見計らって、市内在住の協会会員に教室で直接 生徒を指導してもらう。 学校の承諾は得ているのですが、一般社会人が授業に参加するというこ とも生徒にはちょっとした刺激や緊張感を与えています。
今までの系統教育が見直されている時期なので、こういった授業もこれからは普通に行われると思 いますよ。
 授業を進めていく中で生徒一人一人の指導に一貫して大切なことは、彼が何をやりたいのかとい うことを常にはっきり認識させることです。オリジナルにとりかかるときまず概念設計を書かせて 何がやりたい」ということを明記させます。そのあと予備設計とか基本設計に進むに連れて条件 は段々変わらざるを得なくなってきますが、その時何を捨てて何を守るべきか、つまりプライオリ ティーですね、これを自分自身で判断できなくっれどね。ちゃあならない。あれもこれもやりたい 生徒にとっては結構辛い体験なのですが、これが大切なのです。何でも良くなってしまうとプラン がグザグザになるし、欲張ると元も子もなくなる。
 与えられた条件のなかで自分のやりたいことをきちんと筋を通す、こういう精神的な体験もさせ られます。七月から十一月までわりと長いタイムスパンでオリジナルをやりますので 作品はもちろん、その過程にも随分個性が表れます。ですから結果だけではなく、過程に重点を置 いて成績評価をしています。

ロケットコンテスト

 半年間の授業の締めくくりとして、秋に開催される北信越モデルロケット大会に、生徒全員が オリジナル機体で参加するんです。授業の完成を待ってもらっているんで、天候の悪い時期になって しまい毎年ご迷惑を掛けていますが。  生徒間や教育界の反響はスゴイ手ごたえが感じられます。生徒は活き活きと授業に取り組むし、卒 業生がもう一度技術の授業を受けたいなどと言っているくらいです。女子生徒は少なかったんで選択 の振分けのときに別の課題に割り当てたんですが、なぜ外したといってクレームをつけてきましてね。 授業外にやらせてるんですが、打ち上げのときはくると思います。
 全国の学校からも色々と問い合わせを受けています。特に高校理科教師からが多いですよ。パソコ ン雑誌に載ったときの反響が一番大きくて、学校で採用したいとか、個人でもやりたいという要望 がきました。おもしろいのですが、直接ではなく教材屋さんや知人を通じてコンタクトしてくる人も います。資料を送ってあげると、その後もずっと色々聞いてくるのです。
 段々、スケール・ブーストグライダー・マルチエンジン機など高度な製作に発展してきました。将 来的にはもっと長期(二年くらい)にやって、共同で大型にも取り組ませたいと考えています。


授業の内容についてのお問い合わせは、 付属長岡中学校教諭 渡辺幸彦まで。
新潟県長岡市学校町1-1 新潟大学教育学部付属長岡中学校 電話0258(32)4190 FAX(32)6336
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