'93ロケット教室 IN NIIGATA 第4日目

【主な内容】

宇宙開発アーティーファクツ見学
創作モデルロケット設計製作

【内容説明】

各自オリジナルロケットを持って新潟に集合、館のバスで長岡へ。まずV2ロケットやサターンのエンジン・アポロ月面着陸船など宇宙開発の実機の部品や宇宙服・人工衛星などを見学。HRCで製作した大型のモデルロケットなどもあわせて見た。色々な突起が飛び出している月面着陸船などをみて、あれもロケットなのにあんな形をしていてよく飛ぶものだなあと感想を述べたものもあった。教室活動で興味やとともに知識、実感といったものが伴ってきた様子。
午後から信濃川河川敷広場を会場として打ち上げテスト。実機で言えばいよいよ打ち上げ評価段階。これをクリアーすれば、運用段階として自分達で打ち上げを楽しめる機体になるわけである。それぞれ最終整備に余念がない。機体検査で安定が出せなかったものは、バランスウエイトを入れたり、フィンを追加したり・・・・。 1回目の打ち上げではツインンビー(ゲームキャラクター)ロケットがブーストフェーズで揚力が発生し、不安定だったのをのぞいて概ね成功。設計ではなく準備に失敗原因があったものを含め、改良を加えて2回目のトライですべて一応の飛行を成功させた。いくつか特筆する。

◎エネルギアブラン・・・
オービターがブースターに2度の迎え角をもたせて取り付けてあることが勝因。オービターを下にするシャトルタイプ独特の上昇姿勢で 32mの高度まで上昇。狙いどおり脇のブースターをきりはなしストリーマ回収。そしエネルギアをきりはなしパラシュート回収。オービターは滑空。
本人評では95%の目標達成度。
43g 35cm A10-3T 小学5年作
◎スペースシャトル・・・
ブランがスチロンペーパー製で抵抗断面がほとんどないのに対し、ムクの発泡スチロールから一刀掘りで切り出したオービター。これはSRBこそは分離しないものの、アルミホイルの芯製ETを分離してパラシュートで回収しようとするもの。 38m上昇し、時間にして1分弱、ほとんど無風状態で150m近く滑空。そしてこの滑空姿勢がシャトルそのもののようにリフティングボディー特有の航跡。本人評65%であったが、われわれとしてはたぶん滑空はおろか、安定翼なしではブーストフェーズで宙返りするものと思っていたので意外にも完璧な大成功に130点!
34.5cm 41g A8-3T 小学4年

◎高高度競技ロケット・・・・
理論的に根拠のある機体をということで高高度機を選択。全長45cm、直径30mmで150mと重量は15〜20gということをあらかじめ設定して設計着手。長い機体を条件にしたため現実の材料を準備して算定したところ20gを僅か越えることが判明。実製作した時点で25g。圧力中心を割り出したところ僅かネガティブであることがわかり5gのウエイト追加。A3-4Tでシミュレーションすると110m台。CD値低減化のためにフィンなどを再調整して再シミュレーション。エジェクション時点での高度が124mで残速度が22m/sと出た。これはもう少し、遅延時間の長いエンジンがあれば目標の150mに達するもの。さらに強いウインドコックが発生しないよう重心位置を調整。打ち上げ結果はやはり上昇中にエジェクションし、その高度は120m。本人評は目標の150mは行かなかったが、シミュレーションどおりの高度が出せたのでとても嬉しい、と実に理論的な感想。達成度は97%で、足りない3%は、(124-120)/124であるとのこと。
中学1年生
結局こどもたちの相互投票で、はでなパフォーマンスをしたエネルギアブランが最優秀賞を獲得。別れ際次々に握手しにきては口々に、
『ねえねえ来年もこの教室やるんでしょう。また絶対くるよ!』
という言葉が最大限、我々の労に報いてくれた。かくして4日間の教室は総て終了し、バスで帰る子供達は見送る我々インストラクターに、彼らの姿が豆粒になっても、まだ手を振っていた。

'93ロケット教室 IN NIIGATA 総括

 昨年はテストケースとして行ったものだが、ことしは科学館主催公募で行われた。公募広報の手違いがあったとかで予定定員の半数で実施したが、それを利して内容の濃いものにすることが出来た。とくにいきなり製作するのではなく、構想→定義→設計→審査→製作→審査→打ち上げ というふうに理論的な段階や手順を追っていくことを強く意図した。小学生や中学生に対して難しすぎるのではという懸念も無くは無かったが、工作という実技がともなうため体で理解し全く問題は無い。またモデルロケットのCADを十分使いこなせるかという試みも行ったが、思ったよりきわめて有用であった。それはフェーズごとにコンピューターを使うことで、かなりし ちめんどうくさい安定計算・CD値・飛行段階・フライトシミュレーションなどを手軽にしかも何度も繰り返して設計や製作に反映させられるため、工学的理論の伴った工作教室を行うことが出来ることにある。  参加当初は、宇宙やロケットではなく工作にのみ興味があるという子供達ばかりであったが、最終日のアンケートによると9割が興味を持つようになったとある。ただ普通の子供のように宇宙飛行士に憧れるのではなく、ロケットを作ったり管制したりする地上要員になりたいというものばかりで、良かったのやらどうやら (^^;; ?


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