成長物件2
成長物件2
さるお宅の,広い前庭というかガレージというか,そういう玄関前のスペースであります。その割と広い空間に,バスケットボールのゴールが横にして置かれているんでした。
この,バスケのゴールというのは街を歩いていると意外とよく見かけるものなんでありますけれども,普通はもっと支柱というか台座が簡単であったり,そもそも支柱がなくてボード部分のみを壁に貼り付けたりしているものが多いので,このお宅のものはゴージャスな部類に入るんではないかと思われるんでした。
そして,そのゴージャスなバスケゴールの後ろの壁というかブロック塀には白い同心円が描かれていて,これが何であるかというとおそらく「一人キャッチボール」用のマトであろうと思われるんでした。
多分,この家のお子さんは幼い頃はこのマトに向かってキャッチボールをしていたんだけれども,少し成長してバスケに転向したんでありますね。
そして今,このゴールは使われているんでありましょうか。お子さんはさらに成長して,ゴルフでもやっているのかもしれない。自分のお金で練習場へ行って。
このマトとゴールは,ゴルフバッグを持って玄関から出ていく「かつてのお子さん」を日々見送りながら,昔のことを懐かしく語り合っているのかもしれないんでした。
ああ。なんか叙情派だ。
こちらは道路わきに立てられている市街地図というか,下に書かれている言葉にすると商工案内図であります。
このふたつの地図,街の形はほぼ同じで線路も同じように走っているのだけれども,道路の数が違っていたりお店の位置が違っていたりするので,おそらくは「古い地図」と「新しい地図」であろうと思われるんでした。
こういうのは普通,新しいバージョンが出たら古いのは撤去されるか,古いものの上に新しいものを重ねていくわけですけれども,ここでは古いものをそのままにして,隣に新しいものを立てたようなんでありますね。
どちらが新しいのかは,地元の人ならわかるんだろうけれども旅人である私にはよくわからないんでした。道路のつながり方や線路の書き方などからして,なんとなく右側が新しそうな感じはするけれども,道路の数が減ってるし。単に簡略化したということなのかもしれませんが。
街にとって地図というのはアルバムみたいなもので,地図の移り変わりを見ると街の成長が感じられたりするわけなんですけれども,そういう街の成長というのを旅人に見せるために,こうやって新旧の地図を並べているんでありましょうか。
だとすると,どちらが成長後なのかわかりにくいこの地図は,ちょっと失敗であります。たぶん,そんなことは全然意図していないんでしょうけれども。
こちらは,だいぶ古くから変わっていないような広告兼務の市街図でありますけれども,貼り付けられている後ろの建物の存在感とあいまって,いい味が出ております。
この地図を見てこの辺の街を歩いてみたいと思い,そして実際に歩いてみたわけで,これがなければこの辺に面白そうな街があるということにはたぶん気づかなかっただろうと思われるんでした。実際に,歩いて面白かったし。
ところが,先日この辺を通ったら,建物と市街図はきれいさっぱり無くなっていたんでした。
まぁ,古くて役に立たない壊れそうなものは,消えていくのが定めでありますけれども,少し寂しい心持のするものではあります。
成長の果ては,消えていくのみ。
「バスケゴール」は亀田町・新明町4あたり。
「新旧地図」は豊栄市・柳原3あたり。
「消えた地図」は白根市・上新田あたり。