認知物件

認知物件


 水色とオレンジのしましま庇のあるこのお店らしき建物,今も営業しているのかどうか,何を扱っているのかよくわからないわけですけれども,少なくともたばこを売っていたことがあるということはわかるんでした。

 この比較的新しい木の塀のうしろにちょっとだけ頭を出している白い物体には,赤く「たばこ」と書いてあるんでありますね。
 自動販売機なのか,奥におばあさんがいて対人販売を行う例の窓口なのか,通勤途上だったのでよく確認しませんでしたけれども,とにかくたばこを売る場所だったようなんでした。

 それが,この木の塀によって完全に機能を失っているんでした。塀の外からこの「たばこ売り場」にアクセスするのはムリであるし,塀の内側からもたぶんムリであります。

 店の中から見てもおそらくは塀の裏側しか見えないんでした。やはりこれは…店の番をするおばあさんがいなくなってしまったんでありましょうか。

 あるいは,いなくなってはいないんだけれども「認知することに支障のある症状」になってしまったとか。
 売り場に座ることが生きがいだったおばあさんのために,この売り場を壊すこともできず,かと言ってそのまま商売をさせることもできないので,売り場は残したまま塀で囲うことにしたのかもしれない。

 おばあさんは今日もこの塀の中のたばこ売り場に座り,自分にしか見えないお客さんを相手に「おや源さん,あんまり吸いすぎると身体に毒だよ」とか「おつりはオマケだ。とっときな」とか言いつつ楽しく商売をしているのかもしれないんでした。


※言うまでもありませんけれども,このおばあさんはもちろんすべて私の膨らみすぎる妄想の産物であります。

「塀の中売り場」は新潟市・東大通1あたり。