くささ物件

くささ物件


 言うまでもなく,自動販売機であります。その,烏龍茶を販売する部分が故障してしまったようなんでした。

 販売機全体が故障したんであれば,お金の投入口をふさいでその上に「故障中」と書くのが普通であります。そうしていないところを見ると,烏龍茶のみが出てこなくなっているんではあるまいかと思われるんでした。

 しかし,ふたつ並んだ烏龍茶のみが出てこなくなってしまうというのは,なにかちょっと陰謀くさいものを感じるでありますね。となりの日本茶は大丈夫のようなのだけれども,最近の国際情勢となにかしら関連があるんでありましょうか。ないか。

 いや,試してみたわけではないので,実は全体が故障中なのかもしれませんけれども。自動販売機が壊れているのかどうか試す,というのは,非常に勇気が必要であります。

 それはさておき,自動販売機というのは人間と会話せずに買い物ができるということで,人間性や社会性の希薄化ということと結びついて語られることが多いわけでした。
 しかし,こういった手書きのハリガミが貼られていたりすると,逆にその書き手の存在というのが浮き出てくるような気がするでありますね。

 顔も見えないんだからただひとこと「故障中」と書いておくだけでもいいのに,「すみません」と一言添えないと気がすまないような人なんであろうか,とか。そして一刻も早くハリガミをしなければならないということで,十分乾かないうちに貼りだしてにじんでしまったんであろうか,とか。

 ハリガミを書いたのはもちろん人なのだけれども,この自販機に人間くささを感じさえしてしまったりするんでした。


 ちょっと前の写真ですが,こちらの自販機はもう全体が機能しないようで,投入口がガムテープでふさいであってその上に「中止」と書かれているんでした。
 これはやはり「故障」ではないのだろうなぁ,という気がするでありますね。車がぶつかったりしたふうでもないから,誰かがこじ開けようとしたのかどうか。

 それにしても,なんとも大雑把な補修であります。ガムテープで4箇所ベタベタ。でもまぁ,自分の持ち物だったとしても,とりあえずの処置としてはこれしかできないのかもしれないけれども。

 そして注意すべきは,真ん中あたりに貼ってあるキャンペーン広告でありますね。これはどうもガムテープの上から貼られているようなんでした。

 つまりは自販機の会社の人は,この状態を見てなおかつ広告を貼っていったわけで,まぁそれが仕事だから当然なんだろうけれども,なんとも機械的に仕事をしたのだなぁ,という気がするわけでした。機械的に仕事をするのは,自動販売機の方であるはずなのに。
 上の物件とは逆に,人間に機械くささを感じてしまいそうであるんでした。

 …今回ちょっとくさいことを言ってるでありましょうか。

「すみません」は新潟市・秣川岸通2あたり。
「ガムテープ」は新潟市・花園2あたり。