コカゲ物件

コカゲ物件


 さてこの写真には,現在はそこに存在しないにもかかわらずかつてそこに存在していたことを誇示するいわば残留思念のようなものが写っていて,即ちそれはシンレー写真のようなものなわけなんですけれども,それがどこに写っているのかわかりますでしょうか。
 と言ってもそんなに怖いものが写っているわけではないので,夜中にひとりでこのページを見ている人も,あわてて後を振り返ってビクビクしたり写真を見ないように目を閉じながら違うページへ移動したりする必要はありませんけれども。

 と言うのも,それは相手が植物だからであります。植物のユーレイというのは,あんまり怖くないでありますね。相手が(たぶん)追いかけてこないからなのか,相手が(たぶん)しゃべらないからなのか,相手が(たぶん)何も考えていないからなのか。

 ということで,問題のその部分の拡大であります。

 これでもまだわかりにくいようで「ん。これはただの細い木なんではないのか」と思われるかもしれませんけれども,じっっくりと見ていただきたいんでした。

 たとえば中央の,枝が枝分かれ(表現がヘンか?)するあたり。ここで,右側の枝が一旦途切れて宙に浮いたようになっております。

 また,一番下の根本部分。地面に達しておらず,浮いております。やはり植物といえど,ユーレイになると足は無くなるんでありましょうか。いや植物に足があるのかどうか知りませんけれども。

 そんなわけで,この「細い木に見えるようなもの」,これは実態としての木ではなくて,木の影なんでした。夏に涼しい木蔭ではなく,木の残影。

 実はこの場所は道路整備のために取り壊された家のあとである,空き地なんでした。
 おそらく,ここに家が建っていたころの家とブロック塀の隙間というのは,細い木がようやく立っていられるくらいのごく狭いスペースだったんでありますね。

 それでもうずっと塀にくっつきながら成長したので,自分の存在がなくなってしまった後にも残ってしまうほどの影が出来上がったんではあるまいかと思われるんでした。

 それにしても,見事に木の形を残しております。かなり注意しないと,影だとは思わない。もし戦国時代に武田信玄の近くで生まれていれば,立派な影武者になったんではあるまいかと思われるでありますね。思われないか。


 こちらはビルの壁面を広範囲に覆うツタの,やはり影であります。ツタの実体が全くないわけではなくて,上の方に残ってはいるんですけれども。

 長いことツタの生えるがままにしておいたために,いざ取り払ってしまおうとしても,影が壁にしみついてしまっていたようであります。

 それで,高いお金を払ってツタを刈っても外見上あんまり変化がないのなら意味がないということで,上の方は撤去をあきらめたのかもしれないんでした。いやあくまでも妄想でありますが。

 そこに本人がいないのに,あたかもそこにいるかのように働いてしまう力を影響力と言う,と言ってもよいんではないかと思われるわけですけれども,植物の影の力も侮れないようであります。

「細木(カズコではない)の影」は新潟市・東堀前通8あたり。
「蔦(攻めダルマではない)の影」は新潟市・東堀前通9あたり。