万感物件
万感物件
さる小さなスーパーマーケットが,閉店したんでした。そして,そのトビラには閉店のあいさつが貼られたんでした。
そしてその隣には,こちらはまだ近所で営業を続ける,姉妹店の「スーパー四ツ角」への地図が貼られているんでした。
しかし,閉店に際して万感の思いをこめたであろうその手書きの地図は,天地逆に貼られているんでありました。惜しい。
これは,貼り方を間違えたわけではないんでありますね。いざ貼ろうと思ったら実際の道路の方向と違うことに気づいて,それに合わせようと思ったら,この向きになってしまったんであろうと思われるんでした。
つまりは,書き方を間違えてしまったんでありますね。おそらく,ここのご主人がこの地図を書く際に座った場所というかその方向が,地図を貼るトビラと逆向きだったんでした。
あるいは,北が上である地図を見ながらそのまま書いたのか。このトビラは北を向いているので,そこに貼ろうとすると南が上になっている地図を書かないといけないんでした。確かに,地図を書く際に陥りやすいワナであります。
このお店をたたむ,最後の作業がこのハリガミだったのではないかと思われるわけですけれども,最後の最後に失敗に気づいたご主人の気持ちはいかばかりであったでありましょうか。
それでも,ここを訪れた人が見やすいように,自分の失敗を隠すことなく地図を逆さまに貼ったご主人は,お客様思いの人なんではあるまいかと思われるんでした。
いやまぁ,それなら書き直せば?という意見もあるかもしれませんけれども。でも万感の思いをこめて書いた地図は,書き直すことなんかできないかもしれないし。
「万感の地図」は新潟市・沼垂東1あたり。