30分物件

30分物件


 何の会社だったか忘れましたけれども,ひょっとするとタクシー会社だったかもしれない。とにかく,とある会社の車庫であります。
 その屋根に近いところに大きく「今日も無事故で 退社30分前まで頑張ろう!」と書き出されているんでした。そして下の方には小さく「生産性向上委員会」と書かれているんでした。

 どうせなら退社するその時間まで頑張ってくれたら社長さんもうれしいような気がするわけですけれども,どう思っておられるんでありましょうか。
 でもなにしろ「生産性向上委員会」がこう言っているわけだから,この「退社する前の30分間は頑張らない」というのは,世界生産性向上学術会議で認められた,翌日の仕事の生産性を上げるために必須の項目なのかもしれないんでした。
 それには社長さんもさからえないかもしれないでありますね。そういう会議があるのかどうか知りませんけれども。

 しかし,実際に30分間頑張らずに仕事をするというのは,意外と難しそうな気もするでありますね。帰宅したり遊んでたりしてもいけないんだろうし。テキトーに仕事をするというのは,慣れないと大変そうであります。まぁ,そういうの得意な人もたくさんいるかもしれませんけれども。


 オマケ。同じ会社の,別の車庫前であります。ひとこと,「スベル」。ひょっとするとこれも「生産性向上委員会」によるもので,一日一回すべると生産性が向上するんでありましょうか。

 しかしこれはおそらくそうではなく,「ここはすべりやすいので気をつけましょう」と注意をうながしているのだろうと思われるわけですけれども,我々が日ごろ目にする路上文字は「とまれ」や「Uターン禁止」や進路表示矢印など,指示命令的なものが多いので,この場合もなんとなく「ここで滑らなければいけないんだろうか」と思ってしまうわけでした。思わないか。

 律儀な人は,誰も見ていないのにここでひとりで滑ってしりもちをついてから,敷地内に入ってくるのかもしれないんでした。ひとりで滑るというのも,けっこう難しい技術のような気もしますけれども。

 芸人さんなんかは,コケの演技ができないと始まらないと言われるし。しかし,「コケ」はともかく「スベル」のは芸人さんにとっては恐怖かもしれないでありますね。
 芸人さんは誰でも一度は冬場の地面の凍る季節にここへ来て,この文字を踏みつけるという儀式をした方がいいのかもしれないんでした。
 それでホントに滑ってしまったら別の世界へ進んだ方がいいという指標になるかもしれない。来たれ。全国の芸人さん。

「30分前」「スベル」は新潟市・紫竹山6あたり。