平物件

平物件


 日本の由緒正しい姓というのは,「源平藤橘」すなわち源氏・平氏・藤原氏・橘氏だそうでありますけれども,私の知り合いの藤原クンやら橘クンはあんまり高貴な感じはしないな。あたりまえか。もっとも,もう何年も会ってないけれども。
 源さんや平さんという知り合いは今のところいなかったと思う。「原平さん」は私の私淑するところでありますが。

 そんなわけで,上の物件。「平のとこや」さんだそうなんですけれども,これはやはり,先祖が平清盛の散髪をしたとかいう由緒あるお家柄なんでありましょうか。
 平清盛といえば通常我々がイメージするところではハゲもといスキンヘッドでありますけれども,あれを剃っていたのがここのお宅であるとか。

 あるいは,これはカンバンではなくて表札であるのか。フランス人にあこがれて,トリコロールをあしらった「平床弥」さん宅の表札なのかもしれない。

 はたまた,世間一般にはあまり知られていないけれども,床屋さんにも階級があるということなのかもしれない。「社長のとこや」あたりから始まって,「課長のとこや」「係長のとこや」そして「平のとこや」があると。
 それが,床屋さんの階級を示すものなのか,その階級の人しか入ることを許されない床屋さんだということなのかはわかりませんけれども。社長とか部長てのは役職であって階級ではないか。

 しかし,みずからを「ヒラのとこや」であるということをカミングアウトしているこちらの床屋さんは立派であります。


 …確かに,ここは新潟平野のど真ん中でありますけれども,ことさらそれを強調されてもなぁと,思ったりするわけでした。
 ひょっとすると,あまり知られていないけれども,山の奥深くには「ここは山地」という標識が立っているのかもしれないし,サハラ砂漠の真ん中には「ここは砂漠」という標識が立っていたり太平洋の真ん中には「ここは海」という標識が立っているのかもしれない。

 ということではもちろんなくて,おそらくこの辺の地名が「ひらの」なんであろうと思われるわけですが,あるいは野原にも階級があるのかもしれない。
 一番立派な野原である「社長野」あたりから始まって「課長野」「係長野」「主任野」そして下っ端が「ヒラ野」だったり…しないか。

「平のとこや」は村上市・上町あたり。
「ここは平野」は西川町・平野あたり。