責任物件

責任物件


 もう,ちょっと古い話になってしまいましたけれども,今年(2004年)一時期世間をにぎわせていたのが,この「自己責任」という言葉でありますね。
 この言葉が流行るきっかけになった事件に関してはここで論じるべきことではないわけですけれども,とにかく便利な日本語を発掘してくれたものであるなぁと,思ってしまうわけなんでした。

 もうとにかく,ことの是非に関する議論をしたくなくなってしまったならば「自己責任でどうぞ」と言ってしまえば自分の責任からは逃れることができ,それでいて「相手の意見は尊重し,なおかつ自分はちゃんと警告を発した」という免罪符的なものまで手に入れてしまうことができるんでした。

 写真の物件の場合「工事中につき 自己責任で」ということなわけですけれども,はたしてどの程度の工事なのかによって,散歩する方も覚悟の仕方が変わってくるんではあるまいかと思われるでありますね。
 ダイナマイトでドーン! というような工事の仕方であれば,散歩はちょっとやめておきたいところであります。あえて,スリルを求めて入っていく人もいるかもしれませんけれども。


 こちらは「巻駅への近道」を示すカンバンで,歩くと7分くらいで駅に着くらしいんでした。しかし実は背景に見えている白い柵はその駅のホームであって,矢印に従わずに直進すると1分かからないで着きそうなんでした。

 とはいえ,もちろんそれは非常にキケンなことでありイノチガケになるはずであって,そういった行為は禁止されていると思われるんでした。「自己責任」どころでなく,「禁止」。
 まぁ,同じ命をかけるにしても,遅刻しないことに命をかけて列車に轢かれそうになったところで,誰も感心はしてくれないのだろうけれども。

 しかし,そこに駅が見えているのに7分のみちのりを歩かなくてはならなくて,それが「近道」であるというのはちょっと納得のいきにくい部分であります。けれども,「人生の近道とは,必ずしも距離や時間で決められるものではない」ということを,このカメが教えてくれているようでもあるんでした。

「自己責任」は分水町・野中才あたり。
「近道7分」は巻町・巻甲あたり。