林立物件

林立物件


 アパートだか社員寮だかというような風情の建物でありますけれども,屋根の上というか脇のほうに律儀に立っているアンテナがいい味を出しております。ここが一番受信しやすい位置なのか,取り付けやすい位置なのか。

 多分テレビのアンテナであろうと思われるわけですけれども,集合住宅だから共同アンテナだなどという考え方はせず,各戸それぞれにアンテナ線を伸ばしているようなんでした。
 今どきのアパートだと必ずひとつくらいパラボラアンテナが見えたりしますけれども,ここではまだそういうこともないようであります。

 6本のアンテナの中でも,一番映りのいいのはやはり頂点のアンテナなんでありましょうか。このアンテナが通じている部屋に住むことが,このアパートの住人たちのあこがれだったりするのかもしれないんでした。

 関係ないけれども,私が東京のアパートでひとり暮しをしていたとき,その部屋はテレビのアンテナが通ってなかったので室内アンテナを使ってて,受信状態がいいときに身体を動かすと画面が乱れてしまうので,いい状態のときはジッと身動きせずにテレビをみていたことをふと思い出したりしたわけでした。


 南伸坊大人の,ちくま文庫「笑う街角」は,文庫になる前は「路上観察ファイル」というタイトルの本であって,当「ご近所路上観察ファイル」はそのタイトルを無断でいただいてしまっていたわけなんでした。

 それはまぁいつかご本人にお会いする機会でもあれば許可を請いたいところでありますけれども,その「笑う街角」の表紙が街の薬屋さんにあるカンバンの写真であって,ひとこと「くすり」と書いてあるわけでした。
 まさしくタイトルどおりの「笑う街角」の写真に,「うわ。すげえ」と思ったもんであります。

 で,上の写真は単にそれと同じようなノボリが3本立っているだけなわけですけれども,3人が「くすり」と笑っていると,常日頃から被害妄想気味の路上観察者は自分が笑われているんではあるまいかと思って恥ずかしくなってしまうんでした。

「あら。綾小路様。あの殿方ごらんになって! くすり。」
「まぁ,あんな格好で街中を徘徊するなんて。 くすり。」
「お二方とも,笑っては失礼ですわ。でも…。 くすり。」

 なんていう具合に高貴なお嬢様方にひそかに笑われているようで。
 そんな言葉遣いのお嬢様がこのあたりを歩いているとも思われないような気もしますけれども。


 こちらはまぁ,林立しているという感じではないですが。電柱を,もっと細い背の低い柱がとりかこんでいるわけでした。小学生が大人を取り囲んでカツアゲしているような感じもするでありますね。

 こういうのはたまに見かけるような気もしますけれども,なんでこういう形になってるんでありましょうか。よく見ると,細い柱の一本から電線だかケーブルだかの束が出ていて,電柱の上のほうに伸びているようであります。そうすると,これは地中から延びている線が地表へ出てくるところなんでありましょうか。それじゃあ,その他の電線が出ていない細柱はなぜそこにあるのか。

 ちょっと見,ロケットのようにも見えるですね。補助ロケットをまわりにつけて。ひょっとすると,こういう路上で極秘にロケットが製造されていて,我々が知らないうちに宇宙に飛び立っているのかもしれないんでした。ふと気がつくと,この電柱はなくなっているのかもしれない。

 まぁこういうのは,そういう仕事をしている人とか,関係者に聞けばすぐに答えの出ることなんでしょうけれども,門外漢からするとなんだか不思議に見える光景なんでした。

「6連アンテナ」は五泉市・駅前2あたり。
「くすりくすりくすり」は五泉市・東本町2あたり。
「ロケット電柱」は新潟市・南多門町1あたり。