壺中天物件

壺中天物件


「東京には空がない」と言ったのは智恵子さんだったような気がしますけれども,この建物の場合,屋内に空があるということらしいんでした。

 あえて1Fと書いてあるからには2Fもあるのだろうけれども,2Fがあるにもかかわらず1Fに空があるわけで,そうすると2Fの立場と言うのはどうなるんでありましょうか。1Fに空があるということは1Fの天井がないということであって,その場合2Fというのは存在しうるものなのかどうか。

 まぁ,1Fの床面積の方が2Fの床面積よりも広ければ,1Fの空と2Fの床は共存できるかもしれませんが。あるいは同じ床面積だとしても,1Fの天井すなわち2Fの床をガラス張りにすれば,とりあえず1Fから空を見ることができるかもしれない。その場合,2FのOLの人は集中して仕事ができないかもしれませんけれども。いやむしろ1Fのサラリーマンの人の方が集中できないか?

 それとも,これは「1Fに空がある」ということではなくて,「1Fが空である」ということなのか。扉を開けて1Fに足を踏み入れると,そこはすでに空。どこまでも落ちていってしまうのかもしれない。


 そしてこちらの建物では,2階にあおぞらがあるようなんでした。新潟の空は冬の間じゅう,写真のように鉛色。この日はまだ歩けるだけ上天気であって,通常は青い空を見られることというのはほとんどないわけなんでした。それが,この建物の2階へ行けば青空が満ち満ちているのかもしれないわけでありますね。
 狭い部屋の中は無限の空間,別世界。中国の壺中天のようであります。

 そういえば先日地元紙で,「新潟では雨や雪がやんだとき,曇っていても『晴れた』という。東京などでは日が射してはじめて『晴れた』という」というようなことが書いてあったけれども,そうだっけか。確かに新潟での使い方はそうだけれども。まぁ,イナカもんであることを隠して東京で暮らしている人は気をつけるように。

「1F空」は新潟市・沼垂東2あたり。
「あおぞら2階」は新潟市・上大川前通3あたり。