カベ物件

カベ物件


 ブロック塀というのは,特に穴のあいた飾りブロックに関しては路上観察のひとつの分野となるほどに,街のいたるところに見られるものなんでした。これのない街というのはなにか違和感を感じる,不自然な感じがする,とさえ思ってしまうほどなんでありました。

 ということで,写真の物件。お宅が大きいので長いブロック塀になっておりますけれども,その中ほどに窓がはめ込まれているんでした。普通のサッシ窓。
 これは,はじめからこういう設計で作ったのかあとからはめ込んだのか。難しいことではないんだろうけれども,なんだか素人目にはタイヘンそうな感じを受けるでありますね。

 写真手前の方は空き地になっていて,以前はここになんらかの建物があったようであります。件のお宅のこちら側には窓が少ないところを見ても,それはしのばれるんでした。

 で,その今は無くなった建物との境にこのブロック塀はあったわけで,今はいないお隣さんとの間にこの窓がどのような役割を果たしていたんであろうか,あるいはお隣が無くなったからここぞとばかりに窓を作ったんであろうか,などと色々と考えてしまうわけでした。

 このお宅とお隣は室町時代あたりから仲が悪くて,互いの家の間には常に壁があったのかもしれない。昭和に入ってからはブロック塀が両者を隔てる壁になったのだけれども,平成に入ってようやく和解し,壁が崩壊してこの窓ができたと。ところがその平和がおとずれるとまもなくお隣は引っ越してしまい…なんていうドラマがこのお宅にあったかどうか,私は知りませんけれども。


 こちらは「ゴミを捨てるな」と書かれた,白い壁。そう,単なる壁であります。塀にはなっていないんでありますね。
 奥に見えるお宅の灰色の塀がすぐ後ろにあるために,なんとなく塀の続きのように見えますけれども,もしそれがなければ,モノリスのごとき白い壁が,ずん,と立っているだけなんでした。

 見てのとおり,ここは現在駐車場になっているわけですけれども,この「ゴミを捨てるな」は誰が誰に対してどこに「ゴミを捨てるな」と言っているのか曖昧であります。

「駐車場の持ち主」が「道行く人」に対して「この駐車場に」ゴミを捨てるなと言っているのか,「奥の家の人」が「駐車している人」に対して「我が家に」ゴミを投げ入れるなと言っているのか。

 それによってこの壁の所有者も異なってくるわけですけれども,駐車場の敷地の中のようだから,駐車場持ち主のしわざなんでありましょうか。
 だとすると,その「ゴミを捨てるな」を言いたいがためにこの白壁をたてたのか。それとも以前にあった建築物の残存物を利用して「ゴミを捨てるな」と書いたのか。

 どちらにしても,この壁のサイズは半端でありますね。この白い壁の前3台分に駐車している人はどう思っているんでありましょうか。車止めも役に立たなくなってそうだし。ときどきゴミが捨てられてるのと,駐車スペースが常時狭くなっているのとでは,どちらが好ましいのか。

 この壁が,駐車場利用者と駐車場持ち主の間の文字通り壁になっていなければいいんですけれども。

「ブロック窓」は中条町・表町あたり。
「ゴミを捨てるな」は新潟市・明石2あたり。