華族物件

華族物件


「貴婦人 販売」であります。いきなりそう言われたときに,どんなものが買えると思ってしまうのがはたして普通でありましょうか。

「お。あの大豆まるごと100%の豆腐じゃん」と思う人というのは,よほどの豆腐マニアであろうと思われるんでした。それでもやはり,そういう人もいるのだろうなぁ。

 それよりは,
「ほお。あの昭和12年に製造を開始され,長さ20.33メートルで動輪直径1.75メートル,最大動輪集馬力は1040psで最高運転速度100キロ,その均整の取れた優美な車体と颯爽と走る姿から『貴婦人』と言われる,あのC57を売っているのか! でもそんな大金は…」
と思う人の方が多いかもしれない。というか,多いだろうなぁ。(※上のセリフはテキトーに検索して拾った情報であり,私自身は鉄道関係の知識は皆無であります)

 あるいは,
「ああ。引退の決まった『空の貴婦人』,コンコルドがこんな新潟のイナカで売りに出されているとは。でもそんな大金は…」
と思う人もいるのかもしれない。

 はたまた,
「おお。あの『海の貴婦人』,海王丸が…」
と思う人も…もういいか。

 まぁ,上にあげた例よりはもっと直截的なというか本来の意味での「貴婦人」を思い浮かべてしまう人が大多数ではないかと思われるわけですけれども。
「ぐえへへへへ。お,おでみてえなゲスな野郎が,こんな高貴なお方を買えるなんてよぉ。ぐへへへへ」
 とか言いながら,成金のイナカ者のオヤジが金にものを言わせて没落した元華族の御令嬢を買ってしまうという,戦後まもなくあたりを舞台にした昔の(今もか?)昼ドラのような光景を思い浮かべ,そして思わず財布に入っているお金を数えたりするかもしれないんでした。しないか。

 貴夫人だと,貴乃花あるいは貴ノ花のおかみさんになってしまいますけれども。…売れるのか?

 加治川村・下中あたり。