捕食物件

捕食物件


 路上観察における観察対象の一分野に「もの食う木」とか「植物は強し」というのがあって,路上観察系の本を読めばそういった写真はよく載ってるんでした。
 しかし実際に自分の目でこれだけ壮絶なものを見ると,やはりちょっと感動するでありますね。まぁ,感動といっても涙するわけではなくて「おおー。すげー」といった類のものでありますが。

 食われているのは「ゴミ捨てのきまり」というありふれた,しかしちょっと古い鉄製のカンバンで,この道路上には同じものがたくさん立っているんでした。
 その中のひとつがあわれにも食われてしまった。食われてしまったというか,まだ食われている最中でしょうかね。胴体をからめとられて,頭からガブリとやられているところ。

 まだ意識はあるのかもしれない。でももう助からないのはわかっているという,絶望的な状況。これからジワジワと何年もかけて食われていくというのは,どんな気持ちであることか。早く意識がなくなってほしいと願っているかもしれない。いやもともとゴミ捨てカンバンに意識はないかもしれませんが。

 しかし,この状態になるまでこのカンバンはまったく動かされることがなかったのかと思うとなんだかスゴイと思ってしまうんでした。


 ちょっと写真がわかりにくくなってしまいましたけれども,真ん中に見えているのは切られた木の根元部分でありますね。石垣の空洞の中にスッポリ入ってしまっている。
 ということで,こちらは逆に木が食われているんでした。もちろんこの場合は周りの石垣が生きているわけではないから,これ以上食われたりはしないんだろうけれども。しかし,なんだか狭苦しくて息が詰まりそうであります。

 それにしても,なんでこういう形になってしまったのか。もともと木のあったところに石垣を作ろうとしたんだろうけれども,この木を撤去しようとするとそのたびに事故が起こってしまったりしたのか。ナゾであります。

 あるいは,人間の知らないところで植物と無機物というのはゆっくりゆっくり,食うか食われるかの戦いをしているものなのかもしれない。人間の意識できる時間なんていうのは,彼らにとっては一瞬のことだろうしなぁ。

「食う木」は長岡市・宮原2あたり。
「食われる木」は東京都・町田市。