落涙物件

落涙物件


 このページでもたびたび出てくる,フェイスハンティング物件。物体の中に顔を見出すというものでありますね。建物の場合は,窓を目,入り口を口として見ることが多いわけですけれども,その窓や入り口の配置によって微妙に変化する表情を読み取る(というか見立てる)のが面白かったりするわけなんでした。

 で,今回の物件。これはまぁ,わかりやすいでありますね。どういう成因かはわからないけれども窓の下の塗装がはげていて,涙を流しているように見えるんでした。
 顔は少し斜め向きで,遠くを見ているようであります。そして涙は片目だけということで,号泣ではなく,はからずも流れてしまった涙と思われるですね。はたして何に涙したのか。

 実はこの家のあるあたりというのは,来るべき道路建設のためにどんどん建物が壊されていっているんでした。

 これは,旧第四銀行住吉町支店の解体前・解体後。いろいろとスッタモンダがあったけれども、きれいに空き地になりました。空が広いのはいいかもしれない。
 まぁこんな感じで,建物がなくなっているんでありますね。涙している家が解体されるのかどうかは知らないけれども,どんどんさみしくなっていく周りの様子に,思わず涙してしまったんではあるまいかと思ってしまったりしてしまうわけなんでありました。

 まぁ私の場合は特に「とにかく古いものは残すべきだ」という考えは持っていなくて,街はどんどん変わっていくものだと思っているんでありますけどもね。古い建物保存の署名や募金なんかには協力もするけれども。
 でもやはり歩いていて面白いのは、古い町並みを残している街であることが多いのは事実なんでありました。ただ,その「残そう」というのがあんまりあざとくなってくると,またちょっと面白みも減ってくるのだけれども。その辺は路上観察者の勝手なところであるな。


 このカンバンのある家のまわりも,同じ工事でどんどん家がなくなっていっておりますね。このさりげないラビットスクータのカンバンも,もうすぐ見られなくなるのかもしれない。と考えると,思わず落涙…まではしないけどもね。やっぱりちょっとさびしいかなと。思ったりするわけでした。

「落涙」は新潟市・南毘沙門町あたり。
「旧住吉町支店」は新潟市・住吉町あたり。
「ラビットスクータ」は新潟市・本町通10あたり。というか,書いてあるな。