地味物件

地味物件


 写真がデカくてごめん。
 この田中菓子店さんは立派に営業しているようなのでありますけれども,店名を書いたカンバンというのが,これだけのようなんでした。いかにも地味でありますね。いたずら坊主のラクガキみたいな感じ。
 まぁ,素敵なカンバンを見て「おっ。こんなところにお菓子屋さんがある。入ってみようか」なんていう人もあんまりいないのかもしれないけれども,ここまで投げやりなのもいかがなものか。
 いやそれだけ味に自信があるのかもしれないけれども。

 あるいは,この字体に秘密があるとか。日本一のグルメであるところの有名な書家が,ここのお菓子を食べてえらく感動して書き残していったのね。で,その辺の2流のグルメがこの店の前を通りかかると
「あっ。これは○○先生のっ…。ははぁ〜っ」
なんて土下座して,お菓子を買っていったりすると。

 水戸黄門が「梅里」と書いていくようなもんか。店主はおかみさんと,「おい。なんでこんなに急に流行るようになったんだ」なんて言って顔を見合わせたりして。
 で,場面が変わって川沿いを歩く御老公一行。
八「あ〜あ。あそこのお菓子,うまかったなぁ。もっと食べたかったなぁ」
格「おまえはホント食い気ばっかりだな」
助「いいんだぞ。お前だけ戻っても。俺たちは先へ行くから」
八「ひでぇや。おいてかないでくださいよぉ。 ご隠居ぉ〜」
黄「かっかっかっかっか」
そこへ芥川隆行のナレーションが…入らないか。


 こちらは,板金屋さんのカンバンであります。
「うちは板金屋なんだ。板とペンキなんかで看板つくってたまるけぇ」という,板金屋さんのプライドが見て取れますですね。そうでもないか。
 惜しむらくは,目立たないということでありましょうか。1メートルくらいのところまで近づかないと,わからない。このカンバンがあることに気づいているのは,郵便屋さんと路上観察者くらいのもんではないかと。

 しかしまぁ,最近林立している,つっつく板金チェーンの毒々しい外装よりもよほどよろしい。

上は加茂市・栄町あたり。
下は加茂市・幸町2あたり。