殺気物件

殺気物件


 牛:「貴方にはなんの恨みもございませんが,お命ちょうだいいたします」
 豚:「ほぉ。オマエにできるかな?」
てな会話をしているような,静かな殺気というのを感じさせる絵柄でありますね。

 牛の方はまだ若いけれども実力もあって最近売り出し中の殺し屋。豚の方はピークを過ぎたけれども百戦錬磨の殺し屋。だが,病に冒されていて自らの死期を悟っている。
 牛は豚を先輩として尊敬しているし,豚は牛の実力を認めている。そして,豚はいつか自分は成長した牛に倒されることを予感し,無意識にそう願ってもいた。
 しかし,黒幕の陰謀により,その対決はあまりにも早くやってきたのである。その実力は接近してきているものの,牛にはまだ豚を超える技量は身についていない。このまま戦えば結果は見えている。
 それは両者ともにわかっているのだけれど,お互いプロである以上真剣勝負をしなければならない。空には暗雲が立ち込めてくる。
 未来を持った者が倒れ,未来を失ったものが生き残るという皮肉な運命になるのか。それとも…。

 なんていうベタなストーリーをつい考えてしまいますですね。私だけか。

 肉屋さんのカンバンには牛や豚や鶏を擬人化したのが多くて,ニコニコしながら自分で自分を食べて「ウマイ!」なんて言ってるのもあったりするけど,やはり「食うか食われるか」の緊迫した状態の本作品は秀作と言えましょう。
 そうでもないか。

 村上市・上町あたり。