便物件

便物件


 とりたててすごく面白い物件ということではないのですけどもね。なんかこう,風情というか,たたずまいがなんともいえない物件。

 この「犬の○便」というところ,ガムがくっついてるんではなくて,プレートが削られてるんですね。よくみると,「小」の字が削られてるようなんでした。自然に削れるもんでもないだろうから,あえて削ったわけでありますね。では誰が削ったのか。

 いつもここで犬に小便をさせていた飼い主が腹いせに削ったのか。ちがいますね。削ったのは,このプレートをつけた人だと思われるんでした。
 おそらく,このプレートをつけた翌々日あたりに,「小」ではなく「大」の方がここにされていたんではないかと。大の方は断ってないんで文句も言えなくて,それでもうくやしくてくやしくて,涙をこぼしながら削ったんではないかと思うんでした。ブロック塀にネジでとめるという,大変な苦労をしてつけたプレートなのに。
 そういうくやしさが,このプレートからはにじみ出ているようなんでした。

 というのはもちろん私の勝手な想像で,ホントはそんなことは全然ないのかもしれない。実はこの削れている文字は「郵」であって,いつも犬の郵便屋さんが犬語で書かれたお便りを配達してくるのに困っていて,それをお断りしているのかもしれない。
 そんなこたないか。

 新潟市・西厩島町あたり。