不可蝕物件

不可蝕物件


 新潟市の郊外,というかかなり外れの方にある,さるお宅の玄関先。雨樋でありますね。雨樋なんだけれども,なぜか宙に浮かせている雨樋。
 そのまま下に延ばしてやればよさそうなものなんだけど,途中から斜めに張り出して,雨水の出てくるところはかなり上の方に位置しているんでした。先端も斜めに切り込んであって,さながら鹿威しのよう。

 これは一体なにを意図しているんであろうかと,思ってしまうわけなんでした。この雨水の出口には,特に何かあるわけではないんですね。よしんば何か,たとえば花壇とかがあったとしても,ここから水が流れるのは雨が降っている時なわけで,ことさら水を引いてやるような理由はないのでした。
 雨の日だけ屋内から「鹿威しセット」を出してきて,ここから出る水で「かっこ〜ん」というのを楽しんでいるんであろうか。そんなこたないな。

 で,この雨樋を真ん中で支えている柱があるのだけれども,そこにはこんなことが。

「ここに,さわらないでください」。
 んー。しかし,触わりたくもなるよなぁ。触わりたくなるように作っておいて「触わるな」というのは,いかがなものか。超ミニをはいて,後ろをカバンで隠して階段をのぼるおねえちゃんみたいなものか。まあ,あれは別に中を見せたいわけではないんだろうけれども。それはともかく。

 この「さわらないでください」という文字は,どうも子どもの字でありますね。そうすると,これはこの家の子どもがやってる自由研究なのかもしれない。「あまどいのかくどとあまみずのいきおいについて」とか。
 あるいは「さわるなと書いてあるにも関わらずその柱に触れる人間の傾向とその行動パターンについて」という発表をするために,じっと家の中から様子をうかがっているのかもしれないのでした。ああ,さわらなくてよかった。

 木山あたり。