末尾物件



 これを書いているのは平成29年3月半ばであって,新潟市でももうそれほど雪も積もらないかなという時季なんでした。

 そんな中で,さる駐車場に掲げられていたのが「消雪完 」というカンバンなんでした。
「ああ。もう消雪作業も終わりましたよ,ということであるか。春も近いしなぁ」
などと思ったりしたわけでありますけれども,もちろんこれはムリヤリなこじつけで納得しようとしているわけであります。

 最後の文字が空いているし,解説されなくてもわかる人が97%くらいであろう気はしますけれども,もともとは「消雪完備」と書かれていたはずなんでした。
 いやしかし雪の降らない地方にお住まいの方は意外とわからなかったりするんでありましょうか。

 実際に別の壁面には「消雪完備」と書かれていたので間違いはないと思いますけれども,あえて一文字外れているというのは違う意味を持たせることができるように配慮されていたりするのかどうか。

 でも「完ナントカ」という熟語はあんまりバリエーションがないのであまり思い浮かばないところではあります。
「ここにオモシロい一文字を入れたら駐車料金ひと月無料」とかキャンペーンをしてもいいような気がするんでした。
「消雪完徹」で,徹夜で雪かきをしなければならない駐車場とか…。ダメか。


 こちらはさるお宅の玄関先であって,「勧誘・セールス 」というボタンがついているんでした。

 呼び鈴スイッチの上に「勧誘・セールスお断り」というプレートがはられているんであろうと思われますけれども,なにぶん大事なところが褪色してしまっているので,本当にそうなのかわからないんでした。

 褪色の結果「勧誘・セールス専用ボタン」と受け取られても仕方のない形になっているわけであります。
 勧誘・セールスの人たちは「お。この家,お断りと書いてないじゃないか。いや実際は書かれているのかもしれないけど,読めないんだからしょーがないよな。きひひひひ」と笑いながらボタンを押すかもしれないでありますね。

 しかし,扉のむこうでは家主が「あのボタンは勧誘・セールス撃退ボタンなのだ。仕組みはよくわからんが,勧誘・セールスがボタンを押すとやつらにだけ電流が流れるようになっているのだ。今日は何人かかるかな。くくく」とほくそ笑んでいるのかもしれないんでした。


 こちらは一月終わりに撮っていた写真でありますけれども,ガソリンスタンド閉店のお知らせのようなんでした。

「当店は一月三一 で閉店いたしま」というのは,オーナーが関西の方だったりするんでありましょうか。いや関西弁というのを詳しく知らないので,関西の方には「そんな言い方せえへん」と怒られるかもしれませんが。(これもか?)

 関西弁でなく,末尾が切れているのだとしたら,本当に閉店のお知らせなのかどうかというのはわからないでありますね。
 切れた末尾には「せん。これからもよろしく」が入っているのかもしれないし。
 あるいは「しょうか。どうしましょうか」というお伺いなのかもしれないし。

 その後またここを通ったらスタンドは営業していなかったようなので,実際に閉店はされたようであります。お伺いの結果「閉店すればー?」と言われてしまったのかもしれませんが。


 とんかつ屋さんの入口わきに貼られていたハリガミであります。
 おそらくはカキフライとか牡蠣料理を始めたということなのかという気がするところでありますけれども,唐突に「かき始めました」と言われると「な,なにを?」と思ってしまうところなんでした。

 とんかつ屋のかたわら,書道を始めたとか。
 雪が降ってきたので雪かきを始めています。とか。
 趣味の園芸で柿の木を育て始めました。とか。
 今までは冬のみの営業でしたが夏季営業も始めました。とか。
 思春期・中学生の息子が,サルのように始めました。とか。(何を)

 あるいは,はがれてしまったけどこの紙の下には実はもう一枚ハリガミがあって,末尾にまだ内容が続いていたのかもしれない。そこには今回始めたたくさんのことが箇条書きにされていたのかもしれないでありますね。
 つまりは「下記始めました」ということだったのかもしれないんでした。

「消雪完 」は新潟市東区・山木戸3あたり。
「勧誘・セールス 」は新潟市中央区・白山浦2あたり。
「いたしま 」は新潟市東区・寺山2あたり。
「かき始めました 」は新潟市中央区・東大畑通2番町あたり。