ウェルカム物件



 路上観察の対象物というのも多岐にわたっているわけでありますけれども,路地ドアというのもそのひとつであります。建物の入口になるドアではなく,建物と建物の間に位置する細いドアでありますね。

 最初の物件はその路地ドアであったろうと思われるものであります。
 ドアの左側にも塀もしくは建物が近接していたはずでありますけれども,それが無くなったので明確な無用路地ドアとなったわけでした。

 しかしこのドアで通行を制限していたのは下の溝のみと思われ,あえてドアを設置する必要があったのであろうかと思ってしまうところであります。
 ドア自体も幅の半分が建物に被さっていて,開けたとしてもかなり細身の人でないと通れなそうなんでした。
 昔ここを通っていた人が最近は太ってしまって通れなくなったので,左側の建物を壊してしまっていつでもウェルカム状態になった。ということでもないのだろうなぁ。


 こちらは普通のお宅でありますけれども,玄関の入口が変わっていて,左側の引き戸と右側のドアが角で接しているんでした。

 中を区切れるほど広くはないようなので同じ空間に入るのだと思いますけれども,なぜこういう作りになるんでありましょうか。

 どうしても引き戸で入りたい派とドアで入りたい派が同居していて,どちらも譲らなかったのか。
 娘がアメリカ人の婿を連れて帰ってきて,「オー。ヒキドナンテ,ワタシツカエマセーン」という婿と「あたしゃドアなんていうハイカラなものは使えないよ!」というばあちゃんの板ばさみとなった結果の折衷案なのか。

 あるいは,どんな人にもこの家を訪れてほしいという家主の友愛ウェルカム精神を体現しているのがこの入口なんでありましょうか。


 こちらは,絵に描いたような高所ドアタイプのトマソンであります。
 門灯や庇もきちんとついているので,以前は出入り口として機能していたんでしょうけれども。

 あるいは,今でも使われているんでありましょうか。忍者の末裔がひょーいと跳んで入っていくのかもしれない。
 所在はみんなが知っているけれども,入れるのは忍者だけという,公然の秘密ドア。中ではどんな楽しい忍者集会がおこなわれているのか。
 中では忍者たちが「僕らは誰かがここにくるのを拒んじゃいないよ。ここへ入れるなら誰でもウェルカムだよ。入れないだろうけどね。フフン」とか言っていたりするのか。くやしい。

 アンテナでありましょうか。矢印がドアを指し示しているようになっているのもウェルカムっぷりを表しているかのようであります。


 オマケ。これはドアではありませんけれども,消火栓の前がビニールで覆われているんでした。新潟駅改修中の一時的なもののようでありますけれども。

 実際に使う場合には「緊急時は蹴り込んで破って下さい」ということであります。
 使わずにすむに越したことはないわけでありますけれども,緊急時,蹴り破ろうとしてボワワンと跳ね返されたらカッコ悪いなぁと,思ってしまうんでした。
 張りのない厚手のビニールだと,そんなこともありそうな気はするところであります。

 数多の格闘家やサッカー選手が挑戦して破れなかったビニール。
 みんなが諦めかけたところに通りがかったギャルが「超だりー」とか言いながらビニールにもたれかかって,伸びていたネイルのささくれがビニールに引っ掛かって破れたりしたら彼女は英雄になれそうでありますね。
 何の話なのか。

「無用路地ドア」は新潟市中央区・上大川前通12あたり。
「和洋両用ドア」は新潟市東区・河渡本町3あたり。
「矢印高所ドア」は阿賀町・白崎あたり。
「蹴破り消火栓」は新潟市中央区・花園1あたり。