出口物件



 鶴岡市・加茂を歩いていたときに,あるお宅の前に書かれていたものであります。
「ネコが出てきますので チャイムをおして下さい」
とのことなんでした。

 まぁ,一般的なオトナの考え方としては
「不用意に扉を開くとうちで飼っているネコが出て行ってしまうので,扉をあけるときにはチャイムを鳴らして知らせてください。ネコが出て行かないようしかるべき対処をした上で家人が応対いたします」
ということを言っているんであろうと思われるんでした。

 しかし,純粋に言葉だけの意味を考えた場合には
「チャイムのボタンをおすと,ネコが出てきてあなたを迎えてくれますよ! カワイイですよ! さぁ,おしてみてください!」
と言っているのかもしれないと,思ってしまうんでした。
 ネコ好きにはたまらないチャイムであります。用もないのに押してしまう人が続出するんではないかと思われるわけでした。

 家の人は「外出中」のようでありますね。
 外側から簡単なカギがかけられているということは,ネコは家の中にいるんでありましょうか。
 カギをかけるんであれば普通にキーで施錠してやればいいような気がするわけでありますけれども,あえて外カギをかけなければならないということは,普通の施錠では内側からネコが開錠してしまうのかもしれないでありますね。
 おそるべきネコであります。あるいは,施錠はこの外カギだけでOKというのどかなお土地柄なんでありましょうか。


 こちらは,もう利用されていないっぽい建物のドアであります。道路に面した入口に対して,ドアは斜めに設置されているんでした。

 入口が斜めになっている建物というのはたまに見かけられるものでありますけれども,ドアが開きそうにないような角度になっているものは見かけないんでした。

 ドアは奥にひらくのかもしれないですけれども,それにしても使いにくそうであります。
 まぁ,雨の日に濡れずに傘をさすくらいのスペースにはなりそうですけれども。

 しかし,なぜこうなったのか。あとから強引に出入り口のスペースを作ったりしたのか。設計者が「あっ。入口忘れてた」とか言ったのか。
 でももうあけられる幅がこれしかなくて,無理矢理ドアをはめ込んでしまったんでありましょうか。

 だとしても,この幅にあえて親子ドアを入れるというのはもう何か狙っているんではないか。実はこれはゲージツ作品なんではないかと。勘ぐってさえしまうんでした。

 もしこれが手前側にしかひらかないドアで,あけることはできるけれども入ることも出ることもできないドアだったとしたら,ホントにゲージツでありますね。


 こちらは,絵に描いたような高所ドアであります。
 門灯的なものもついていて,美麗な物件でありますね。

 高所ドアの成因としては「高所階への荷物搬出入口のなごり」「アパート2階廊下のなごり」「外階段のなごり」「解体された建物との境界」などが多いですけれども,これはどうも位置的にどれにも当てはまらないような感じなんでした。

 普通のお宅とも違うつくりのようなので,なにかしらの理由があるんでしょうけれども,よくわからないところであります。
 関係者に聞けばすぐにわかるんでしょけれども,ただ単に「美しい」という愛で方をするというのもいいんではないかというのが,私のスタンスなんでした。


 こちらは特におかしなところはない,駐車場の出口であります。
 ただ,向こうから見れば普通に「出口」であるものが,こちらから見ると「口出」になってしまうのがオモシロいなぁと,思っただけなんでした。

「出」も「口」も線対称の文字なのでそうなってしまうわけでありますけれども,縦書きにすれば解決するんだろうがなぁ,でもこの上下するバーに縦長のシートが下がっているというのもそれはそれでマヌケな感じがするのかなぁ。などと思ったり。

 あるいは,これは「神」を「ネ申」と書いたりするように,一文字で「咄」と書いてあったりするんでありましょうか。
 今ちょっと調べましたけれども,「咄」は「咄嗟」の「咄」でありますけれども,「はなし」と読んだりそのまま「とつ」で「舌打ちをする音」だったりもするそうであります。

 するとこれは「出口」から入ってこようとするものに対して,舌打ちをしているんでありましょうか。
 あるいは「出口」から入ろうとすると,落語好きの駐車場のオーナーが出てきてつかまえられ,落語をひとつきかないと許してくれなかったりするんでありましょうか。
 もうオーナーは一席ぶちたくて,いつも駐車場の方をみつめているのかもしれないでありますね。しれなくないか。

「ネコが出ますよ」は鶴岡市・加茂あたり。
「ゲージツドア」は新潟市中央区・春日町あたり。
「美麗高所ドア」は新潟市東区・東新町あたり。
「口出」は新潟市中央区・本町通4あたり。