初秋物件

初秋物件


 今年の夏は暑かったですねぇ。いや新潟は去年の方が暑かったような気もするんだけれども,今年も暑かった。そんな暑い時にカレーライスなんか食べたくないと思うのは,人間の素直な気持ちでありましょう。「いや,暑い時こそカレーだ!」と言う人もいるかもしれないけれども,それはハウスの宣伝コピーにのせられているのだ。

 と思うほど,このハリガミには哀感を感じてしまうのでした。もう,これを見ただけで,店内で助け合いながら働く,割烹着姿の老夫婦の姿が見えてしまう。

 戦争で息子夫婦をなくした店主夫婦は戦後のバラックから細々と食べ物屋を始め,なんとか食堂を開くのだけど,跡継ぎはいない。店のカレーは人気を博すが,年老いた店主には,もう夏場にカレーを作る体力は残されていないのだ。常に主人を支えてきた老妻も最近は病気がち。「こんな時に息子が生きていてくれたらなぁ…」というのが口癖になっている主人なのだった…。

 いやホントはここの主人,体力バリバリのサーフィン好きな30代で,夏場はサーフィンに忙しくてカレーを作れないということなのかもしれないですが。店に入ったことないのでわからないのでした。でもやっぱり老夫婦であってほしいなぁ。

 この写真を撮ったのは夏の終わり頃。今はもうすっかりすずしくなったんだけれども,そろそろカレーは再開したんであろうか? 遠くなので確かめることはできないのでした。
 東京は高円寺南の食堂,いこいの店頭。