999物件

999物件


 新潟市以外の方はよくわからんかもしれませんけれども,新潟市の西堀通りというのは,上(かみ)から下(しも)までズラリとお寺が並んでいるところなのでした。

 で,あるお寺の門前に,この大小ふたつの石像というかオブジェがあるわけなんでした。小さい方の像を見るとどうやら顔があるようなので,おそらくは親子が向かい合って互いの顔を見つめているというものなのだろうと,思われるのでした。

 そうすると,親の方はどんな表情をしてるんだろうかと思うのは人情でありますね。子どもの方はハッキリしないけれども,親の方は慈しみの表情を浮かべているんではないか。親の愛を感じさせるお顔をしてるんではないか。疲れた心を癒してくれるんではないか。ああ,癒してほしい。と,日々の暮らしと時間に追われ,疲れた人々は思うでありましょう。
 そして,お顔を見ようと向こう側へまわり,覗き込むでありましょう。すると。



 そのお顔は,必死に逃れようとしていた,時間そのものであったのでした。
 これはムゴイ。のっぺらぼうから逃げてる最中に,通りすがりの人に「こんな顔でしたかぁ〜?」と言われるようなもの。覗き込んだ人はもう立ち直れないかもしれないのでした。

 いやそんなことはないかもしれませんけれども。でもガクッとくることは確かでありますね。
 タイトルの「999物件」というのは,なんだか「銀河鉄道999」に出てくる機械人間というのを連想してしまったということなんでした。小さい方は鉄郎ね。

 西堀2か3あたり。上の方。