リバース物件



 一軒のお宅に表札が複数掲げられているというのは,時おり見られるものであります。
 二世帯住宅とかシェアハウスとか色んな事情やらなんやらがあるんだろうと思われるわけでありますけれども,こちらのお宅の前を通りかかったときには「マジすか」と半分声にでそうなくらいだったんでした。

 いやまぁ黒井さんも白井さんも普通にある名字なので,たとえば二世帯住宅の場合でもその二世帯が同居するという確率は当然あるわけでありますけれども。
 でもしかし,それはどのくらいの確率になるのだろうなぁ,と考えずにはいられなくなるんでした。

 それとも,実は同一人物なんでありましょうか。
 家主はふたつの人格を持つ人物で,あるときは天使のように優しい白井さんで,あるときは極悪非道の黒井さんになってしまったりするのか(全国の黒井さんにケンカを売っているわけではありませんので,黒魔術かけたりしないでください)。

 そのときどちらの状態になっているかに応じて,どちらかの表札を裏返したりするのかもしれないでありますね。しれなくないか。
 黒井さん状態の時には,訪問者をだますために素直に裏返さないかもしれないしなぁ(まだ言うか)。

 あるいは,これは本名ではないのかもしれないでありますね。
「白・黒」の下の「井」がポイントであって,これは盤面をあらわしているのかもしれない。つまりは,格子状の盤面で黒と白のコマで戦う,オセロ大好きの家であるということを表明しているのかもしれないんでした。
 しれなくないか。囲碁かもしれないし。

 訪問して,あしゅら男爵みたいな人が出てきたらイヤだなぁ。いやウレシイか?


 こちらは遊歩道の片隅に掲げられていたカンバンであります。
 おそらくもともとは「犬のフン 持ち帰れ!」と書かれていたであろう,飼い主に対する命令型の犬フンカンバンなんでした。

 ただ,大事なことである「持ち」を赤字で書いてしまったために褪色し,結果として「犬のフン 帰れ!」というメッセージになってしまったわけでした。

 確かに,遊歩道にいてほしくないのは犬でも飼い主でもなくフンそのものなので,フンに対して「帰れ」というのは正しい指向性であるような気もしないでもないところではあります。
 もしフンに自我があったなら「ガーン」とショックを受けてトボトボと帰っていくかもしれないんでした。

 しかし,帰れと言われてもフンはどこに帰ればいいんでありましょうか。飼い主の家か。それが一番いいでありますね。飼い主が玄関をあけたらフンが鎮座しているとなれば,すべて丸くおさまりそうであります。

 でもフンにそんな判断力があるかどうか。言葉どおりに受け止めるなら,フンが帰っていくのはそう,犬のおなかであるような気がするんでした。
 犬のおしりからおなかの中へ,むりむりと戻っていくフン。犬は災難であります。
 犬のためにも,フンはちゃんと持ち帰りましょう。


 オマケ。こちらはスナック的なお店の壁面であります。
 かつてはもっと立派な文字のカンバンが掲げられていたようであります。

 でもそのお店が撤退したのか,上のSnackという立体文字を残して旧店名は外されて,新店名である「シルク」という文字が手書きで書かれたようなんでした。

 しかしグレードダウン感は否めないところではあります。
 そしてこの文字を見ているとなんだか不安感を感じてしまうのは,右から「クルシイ」と訴えかけられているかのように読んでしまうからなのかもしれないんでした。

 いや,こういう飾り的なものにはお金をかけずに店内とサービスにバッチリとお金をかけている素晴らしいお店なのかもしれませんが。私は下戸なので行きませんけれども。

「黒白」は新潟市…あとは一般のお宅と名前なので住所割愛。
「帰れ」は新潟市中央区・近江3あたり。
「クルシ」は新潟市秋葉区・新津本町1あたり。