下克上物件

 先日,新潟プランツウォークというイベントがあって,いとうせいこうさん,柳生真吾さんらが新潟に来て街を歩いたりトークライブを行なったりしたんでした。
 私も少し一緒に歩いたりトークライブでオモシロい話を聴いたりしたわけであります。これは楽しかった。
 路上観察者を名乗っていても特にこれといった専門分野を持たない私としては,そういうことがあると多少なりとも感化されてしまったりもするわけでした。
 歩いていても,植物方面に目がいってしまうんでありますね。植物の名前もほとんど知らないのに。すると,今までもさんざん通っていたのに見逃していたモノもあることに気づいたりするんでした。
 まぁ,路上観察の対象物にも「モノ食う木」などの「植物は強し物件」や「植物ワイパー」といった植物関連の物件もあるわけでありますけれども。
 そういったものを物件にしていたりもしますけれども,植物主体に見ていくということをすると,また被写界深度が一段深くなるような気もするわけでした。
 という長い前置きのあとで,物件であります。
 上の写真はさるお宅の脇にある,モミジの木でありましょうか。葉っぱがそれっぽいし(植物知識,この程度)。
 だいぶ大きくなっていますけれども,下に鉢があるので,鉢植えのようなんでした。
 ほぅ。鉢植えもこんなに大きくなるか。でもバランスはとれてるのか?
 と思って鉢のほうを見ると,こうなっていたんでした。

 ちょっと見えにくいところでありますけれども,鉢の下から根が突き出て地面に根付いているようなんでした。それもかなりしっかりと。
 そして,それにともなって鉢のほうは少し浮いてしまっているんでした。
 モミジが,鉢の腰巻を巻いているかのようであります。
 鉢の中で育ってきたモノが,鉢を持ち上げる側になる。植物下克上でありましょうか。
 まぁこういうこともあるのかな,という気もするところであります。植物は育ち,鉢は育たないのだから。
 しかしちょっと気になるのは,これだけ樹木が育っていく中で,植木鉢は割れたりしないのか? ということであります。
 植えられた当初から比べれば幹もかなり太くなったんではないかと思われますけれども,鉢は特に損傷しているようには見えないんでした。底のほうは穴があいているんでしょうけれども。
 してみると,手入れを放棄してのび放題になっているように見えるこの木は,実は最初から「鉢を腰に巻いた木」というゲージツ作品を作るべく綿密な手入れを施されているんでありましょうか。
 それとも「樹木の成長とともに育つ鉢」というハイテクな植木鉢というのが私の知らぬ間に存在していたりするんでありましょうか。
 園芸,おそるべし。であります。
「下克上モミジ」は新潟市中央区・沼垂東4あたり。