とびだす物件



 割とよく見かける感じの,いわゆる「飛び出し坊や」であります。
 行き交う自動車に対して,子どもの飛び出しに注意するよう,日夜からだを張ってくれている感心な坊やたちでありますね。

 ただ,この物件の坊やに関してはどうなんであろうかと,思ってしまったんでした。
 おそらくはボールか何かを追いかけて道路に飛び出してくる坊やを描いているんだろうと思いますけれども,この手の形は何かを取ろうとしているというよりも,何かを押している感じであります。
 視線も,ボールではなく,やってくる車の方を見ている。しかも笑顔で。

 つまり,この坊やは車がやってくるのを確認した上で何かを押そうとしていると。
 何を押すのか。それは,道路の端を歩いている別の人ではないかと思われるんでした。
 ぼーっと歩いている通行人を見つけると,車とのタイミングをはかり,タタタタッと走ってきてドンと押す坊や。

 これは恐ろしい。死神のような坊やであります。
 そう思ってみると,確かに「とびだし注意」ではなくて,ただ「注意」としか書いてないわけで,このカンバンは「死神坊やに注意」ということなのかもしれないんでした。

 それに気づいたとき,私もあわてて周囲を見回しましたけれども,坊やはいなかったので命拾いをしたんでした。
 ひょっとすると,物陰でこちらを見ながら「ちっ。気づいたか」と舌打ちをしていたかもしれませんけれども。


 こちらは,自転車が描かれた「注意 とびだし だめょ」のカンバンであります。
 右側は道路,左側は公園になっているんでした。

 これは,誰に対して注意をうながしているのか。
 車に対して「公園から自転車がとびだしてくる」と言っているのか。
 自転車に対して「公園から子どもがとびだしてくる」と言っているのか。
 子どもに対して「自転車などが来るから公園からとびだすな」と言っているのか。
 まぁ,各々の立場で自分に向けて言われていると思えば,それでいいわけでありますけれども。

 それにしても,この自転車はすごいスピードで走ってそうでありますね。
 髪の毛は後へ真っ直ぐなびいているし。
「とびだし」の文字はその勢いで曲ってしまっているし。

「とびだし だめょ」というのが音声であるとしたら,音の壁を破ろうとしているようであります。
 つまりは,音速を超えようとしているんでありましょうか。
 してみると,この「注意」というのは「とびだしに注意」ではなくて「超音速で走る自転車がいるので,衝撃波,ソニックブームに注意」ということだったりするんでありましょうか。
 だったりしないか。


 オマケ。
 こちらは公園の遊歩道に設置された擬木列とホンモノの樹木であります。
 ホンモノの木の方が
「むむぅ。こんなニセモノの木で我々ホンモノを囲むとは,なんたる失敬な! 責任者を呼べ! いや,こちらから行ってくれるわ!」
と,実力行使に出るべく一歩を踏み出したかのようなんでした。

 まぁ樹木のことなんで,次の一歩が出るまでに何年かかるかわかりませんけれども。

「死神坊や」は新潟市中央区・学校町通2あたり。
「音速の壁」は新潟市東区・物見山3あたり。
「にせもの」は新潟市東区・松園2あたり。