妖怪物件
歩道つきのちょっと大き目な道路に面したお宅の一角は,植木鉢などが並んでいてちょっとした園芸スペースになっているようなんでした。
ちょっと雑然としていますけれども,楽しみに育てているんではないかと思われるでありますね。
ただ,そこに立てられた立て札が少し不穏なんでした。
「火付婆々 薬かけ婆々にご用心」
ということであります。こういったものが3本ほど立っているわけでした。
「火付けばばあ」とか「薬かけばばあ」とか,なんだか「砂かけばばあ」の親戚の妖怪が出るみたいであります。
ただ砂をかけるのと比べるとだいぶ殺伐とするというか凶悪な気はしますけれども。
でもカンバンとしては面白い感じがするのにちょっと笑えないのは,あまりに生々しい感じがするからでありましょうか。
これはもう完全に「火付婆々」であり「薬かけ婆々」であるというのが誰なのか,特定できているわけでありますね。
誰かわかった上で「みなさん,こんなとんでもない人がいるんですよ。こんな人どう思いますか」という間接個人攻撃をしているんだと思われるんでした。
もちろん,草花に薬をかけられたり火をつけられたり(考えるとスゴいな)した被害者はこちらなんでしょうけれども,もうちょっとなんとかならんのかなと思ってしまって,いまひとつ笑えないわけでした。
あるいは,「婆々」というのは「バーバババ」というどこかのオバケの仲間だったりするのかもしれないでありますね。しれなくないか。
こちらはわりとよく見かける標語であります。もともとは
「たしかめて またたしかめて ハイ横断」
だったような気がしますけれども,例によって褪色してしまって
「またたしかめて 横断」
しか見えなくなっているようなんでした。
これだけだと
「なんだ。また確かめて横断してるのか。そんな確かめてなんていないで,さっさと渡っちゃいな!」
と言われているようであります。そうでもないか。
あるいは,この近辺では「妖怪 チャックおろし」というのが出るんでありましょうか。
横断歩道上に生息し,横断している人間に音もなく近寄って気づかれないうちにズボンのファスナーをおろしてしまう妖怪。
気がつくと社会の窓(今でも言うのか?)全開で歩いていることになるという,世にも恐ろしい妖怪。
そんなことにならないように「股を確かめて横断しましょう」と警告してくれているのかもしれないんでした。しれなくないか。
こちらはまぁ,物件でもなんでもない洗濯物であります。たぶん。
ただ,この一枚だけ干されているというのがなんとなくオモシロく感じてしまったわけでした。
ちょうど窓のところで通せんぼしているようで「この部屋はオレが守る!」とでも言っているみたいなんでした。
あるいは,実はここに透明人間が立っていたりするんでありましょうか。
上半身にトレーナーだけを着て下半身丸出しの,ヘンタイ透明人間。
でも全裸になるのは透明人間の宿命であります。透明人間の場合は変に衣服をつけたほうがイヤらしくなるようでありますね。
下は丸出しだよ。というアピールをしても実際には見えていないわけで,これはワイセツ物チンレツ罪にはならないんでありましょうか。
そう考えると,露出狂の透明人間というのはアワレでありますね。露出による犯罪をおかしたものは透明人間にする,という刑罰がいいのかもしれない。そうなると別の犯罪をおかしそうではありますけれども。
いったい何を言っているのか。
透明人間は妖怪とは違うような気がしますけれども,細かいことは気にしないんでした。
これは妖怪・コウガンムチのしわざかもしれない。しれなくないか。
でもそれがコウガンをムチでたたく妖怪だったら恐ろしいな。何を言っているのか。
「婆々」は新潟市中央区・沼垂東6あたり。
「また」は新潟市中央区・沼垂東3あたり。
「透明」は新潟市中央区・秣川岸通2あたり。