上下物件



 車一台が通れるかどうかの狭い小路であります。その小路から広い道へ出るところで,執拗なまでに「とまれ」が連呼されているんでした。
「とまれ,とまれ,とまれーい! この紋所が目に入らぬか!」
と格さんが印籠をかかげそうであります。そうでもないか。

 あるいは手前の「とまれ」は,マンホールの前で安全確認をしなければならないということなんでありましょうか。

 6方向の立体交差点なのか。
 うかつに前に踏み出すと,いきなりマンホールの蓋があいて誰かがピョーンと飛び出してくるのかもしれない。
 そして,なんだなんだと思っていると上から誰かがストーンと落ちてきて,マンホールの中に消えていき蓋が閉じられるのかもしれないんでした。
 ちょうどまたいでいる時に下から飛び出してこられたら,男性の場合は大惨事になりそうでありますね。

 私の好きな漫画家のひとりに,とり・みき師がいて,中学生(だったか?)のころに少年チャンピオンでデビュー作の「ぼくの宇宙人」を読んで「おおお」と思って以来のファンなんでした。

 その作品のひとつに「遠くへいきたい」(TVブロス・河出書房新社)というセリフなしの9コマ漫画作品群があるわけでありますけれども,その中でも私が一番好きなのが
・断崖の,人ひとりが横づたいにしないと通れない細い道を行くタキタさん。
・進んでいくと,逆方向から同じように人がやってくる。
・膠着状態のところへ,下から断崖を登ってくる人。
・さらに上から断崖を下ってくる人。
・四すくみの状態のところへ崖に穴があいて,狭いトンネルを掘ってきた人が現れる。
・オマケの10コマ目ではさらにハンググライダーに乗った人が…。
という,動けない状態で次々に6人鉢合わせとなる作品なんでした。
 この辺は実際に作品を読まないと伝わらないかもしれませんが。(第5巻所収)

 そんなわけで,この6方向交差点(じゃないだろうけれども)でその作品を思い出してしまったわけでした。


 オマケ。
 こちらは「自転車通行禁止」というありふれたカンバンでありますけれども,上の止め具がはずれたのか,さかさまになってしまっているんでした。

 まぁそれだけなんでありますけれども,お店のカンバンなんかではあえてさかさまにすることによって人目をひいたり意味を持たせたり(「まずい!」をさかさまにするとか)している場合もあるので,これもそうだったりするんであろうかと思ってしまうわけでした。

「通行禁止」が逆だから通行可能なんだと思った,と屁理屈を言われてもしょうがないところであります。
 あるいは,自転車をさかさまにして引いて歩くことを禁じているんでありましょうか。そんなことをする人もいないような気もしますけれども。


 もひとつオマケ。
 小型のテトラポッド群の上に大型のテトラポッドが乗っていて,キングオブテトラポッドみたいな感じになっているんでした。
 下のテトラポッドも,いつか下克上をせんと狙っているんでありましょうか。

 あるいは,テトラポッドというのは最初は小さいけれども成長して大きくなっていくものであって,特定の大きさに育ったら出荷されていったり…しないか。

 それともこれはウルトラセブンにやられたキングジョーの残骸だったり…しないか。

 しかしこれは下に額縁みたいな土台があったりするので,ゲージツ作品のような気がするでありますね。街中にアートを置く芸術祭みたいなのを新潟市ではときどきやるし。
 ゲージツでなくても,少なくとも見られることを意識して作られているようなので,うちの物件としては基本的に対象外であります。
 でも私はテトラポッドというのが造形的に好きなので,オマケとして出してしまうわけでした。

「6方向」は新潟市中央区・春日町あたり。
「逆転車」は新潟市中央区・万代島あたり。
「テトラ」は新潟市中央区・万代島あたり。