裏側物件



 さるお宅(だかなんだか)の入口のようであります。ガラス戸にテープか何かで「人口」と書かれているんでした。
 こちらで世界の人間の数を集計していたりするんであろうかと思ったりもしたわけでありますけれども,そんな感じでもなさそうなんでした。

 だとすると,これはやはり「入口」であって,ちょっとテープの貼り方を間違えて「人口」になってしまったのかな,と思われるわけであります。
 しかし,これを戸の裏側から見れば「入口」と書かれているわけで,内側に向けて書かれた文字なんであろうかとも思われるんでした。

 内側に向けて書かれているんだとすれば,「ここは入口であって,出口ではない」ということを明示的にしているわけで,いったん中に入った人がまたこのガラス戸から出ては困るということなんでありましょうか。
 ここは,一度中に入るともう二度と出てくることのできないおそろしい館なのかもしれないでありますね。

 あるいは「出口ではない」と言ってるんではなくて,純粋に「入口である」と言っているのかもしれないでありますね。
 つまり,このガラス戸の向うは空間がねじれていて,こちらより広い空間,たとえば宇宙空間なんかがひろがっているのかもしれない。
 そして,宇宙空間にはぽっかりとこのガラス戸が浮かんでいて,この「入口」を通って宇宙人が地球に入ってきているのかもしれないんでした。

 ここが「入口」だとすると,どこかに「出口」もあると思われるわけでありますけれども,「出口」はテープの貼り方にかかわらず「出口」であると思われるので,安心であります。
 でもうかつに「出口」に入ると宇宙空間に投げ出されるかもしれないので気をつけましょう。「出口に入る」っていう言い方はヘンか?


 こちらは,たばこ売り場わきのカンバンであります。「暮らしにつながる この一服」ということで,影絵的なイラストが添えられているんでした。

 しかしこの影絵の女性,深窓の令嬢というか避暑地のセレブお嬢様という感じで,今となってはタバコとイメージがかけはなれてしまっているように思えてしまうわけでした。

 もちろん,年齢にさえ達していれば貴婦人だろうがお嬢様だろうがタバコを吸ってもかまわないわけでありますけれども,庶民は勝手にイメージしてしまうわけであります。
 セレブお嬢様としても,その辺のイメージというのを意識して吸いたいものをガマンしていたり,少なくとも人目のあるところでは吸わないようにしている人も多かったりするのかもしれないでありますね。

 この影絵の女性も,煙の量からしてよほどガマンしてお屋敷まで帰ってきて,ようやくリラックスできたのかもしれない。
 さきほどまで
「あら。ごきげんよう。いいお天気ですわね。ほほほ」
とか言っていたんだけれども,屋敷にはいると
ドタドタドタ「あーっ。タバコタバコっ」がさがさ。シュバッ。ぷかー。「か〜っ。この一服がたまんねぇんだ〜っ」
なんて言ってたりするのかもしれないんでした。

「入口人口」は村上市・瀬波浜町あたり。
「煙草令嬢」は新発田市・大手町1あたり。