職人物件



  道を歩いていると突如目に入ってくるカンバンであります。ドラキュラ…じゃないか。X−MENの人…でもないか。

 まるで昔の映画の看板みたいな絵でありますけれども実はそのとおりで,ここはホントに映画看板を描く人の事務所だか自宅アトリエだかなんでした。映画に詳しい人ならこれが何の絵なのかわかるでありましょうか。

 以前はもっとたくさん映画看板が並べられていたんでありますけれども,久しぶりにこの辺を歩いてみたらそれらの看板はなくこのシャッター絵だけで,建物には「売」と書かれていたわけでした。

 場所を移ったのかやめてしまったのかあるいはそれなりの年齢だろうからひょっとして…という感じでありますけれども,事実はわからないんでした。ローカル的には割と有名な人だと思うので,調べればわかりそうではありますが。

 だから,こういった絵がここにはあるというのは知っていたわけでありますけれども,うちの物件として紹介するものではないなと思っていたんでした。
 でもそれがいつの間にやら無くなってしまっていたのはちょっと寂しかったので,今回その残留物を物件としてみたわけであります。

 しかし,よりによってこの絵が残っているというのはどうなのか。知らない人が夜に車で通りかかってライトにこれが浮かび上がったら,気を失いそうであります。

 この辺のお宅のシャッターには他にも犬の絵なんかがリアルに描かれているところもあって,同じ人の筆によるものなのだろうと思われるんでした。
 街のシャッターすべてに絵を描いて,続けて見るとひとつの映画になっている…なんていう街もオモシロそうでありますけれども,一軒だけシャッターを開けてる家があったら非難されるのだろうなぁ。


 こちらはゴミ集積所にある,おそらくは木製のゴミ集積箱であります。
 現在は折りたたまれている状態でありますけれども,使用時には箱になるんでありますね。たぶん。

 軽い金属枠にネットのついたような簡単な移動式折りたたみ箱はよく見かけますけれども,これだけ重厚な木製のものは初めて見たんでした。
 これはこういうものが販売されているんでありましょうか。それとも近所の大工さんとか木工職人の人が町内のために作ったのか。

 この近くにはいくつか同じようなものがあってそれ以外の地区では今のところ見たことがないので,町内の職人さん説が有力であるような気がするんでした。というか,ぜひそうあってほしいという希望的観測。

 軽い金属製のものの方が取り扱いも楽そうで合理的であるような気がするところでありますけれども,やはりこの木製の重みというのも捨てがたいところであります。

 ゴミを出す日の朝は,このゴミ集積箱を開くちょうつがいの音が町内に響いているんでありましょうか。なんてこと言ってると
「おめさん何ゆうてあんて。音なんしねよに作ってっこてや。(てめぇ何言ってやんでぇ。音なんかしないように作ってあらぁな)」
と職人さんに怒られるかもしれませんが。


 オマケ。  ちょっと写真大きめのこちらは,さるお医者さんの電柱広告であります。名前完全に出ちゃってますが。
 まぁなんというか手作り感あふれる文字とイラストによるカンバンなんでした。ある種,シュールささえ漂う感じであります。

 このあたりの電柱何本かに同じカンバンが貼られていたので,元絵からプリント(というのか?)されたもののようなんでした。
 制作費はだいぶ違うんでありましょうか。あるいはお金の問題ではなくポリシーをもってやっているのか。なかなか部外者には伝わりにくいポリシーかもしれませんけれども。

 まぁもちろん,お医者さんの本分はカンバンを作ることではなく医療であるわけなので,医療でその職人技を発揮していただけばそれでいいわけであります。

 しかしながら,その職人技を発揮しようにもこのカンバンを見て人が来るのかどうか,という問題があるでありますね。

「この辺に腕のいい医者がいるそうだ。そこへ行けばきっと助けてもらえるぞ」
「ああ…。噂はきいたことある…。どんな病気だって,俺のこの難病だって治してくれる…よな…」
「もちろんだ。おっ。見ろ。あの電柱にカンバンが出てるぞ!」
「ああ…。もうすぐ助かるんだなァ…。医者はどっちにあるんだ…?」
「このカンバンによれば…。よれば………」
「おい…どうした。俺にもカンバン見せろよ…」
「だっだめだっ!お前は見ちゃいかん!」
「いいから見せろッ」ガバッ。「う……………」ガクッ。
「あっ!おいっ!しっかりしろっ! …だから見るなって言ったのに…言ったのに…。うおぉぉぉぉっ」

などということが時折おきて…いないか。
※もちろん私の妄想でありフィクションでありますので,カンバンにめげずどしどし診察をうけましょう。

「映画看板」は新潟市東区・松園1あたり。
「木製箱」は新潟市中央区・蒲原町あたり。
「手書医者」は新潟市東区・小金台あたり。