まごう物件



 路上の物件というのは,その物件自体がおかしいのが基本でありますけれども,物件自体はおかしくないのに観察者のアタマの方がヘンだという場合もあったりするんでした。見まつがいであります。

 特にうちの物件の場合はその傾向が顕著でありますね。
 だからまぁ,真の路上観察者(というのが何なのかはよくわからないですが)の人から見れば「なに邪道を垂れ流しておるのか」と思われているかもしれないですけれども,そういったアタマのエラーというのもちょっとオモシロかったりするのだよなぁと,思ったりもするわけでした。

 そんなわけで,最初の物件。
 まごうかたなき「ちらし定食」であります。

 ただ,「ち」の字の横棒右側がちょっとかすれているために,私が目の端でこのカンバンを見たときに「ぢらし定食」と見えてしまったという,ただそれだけなんでした。

 あらためて見てみればまったくの「ちらし定食」であるし「ぢらし定食」なんていう風に間違えることの方がタイヘンなような気がしますけれども,そのときはそう見えてしまったわけでした。
 もちろん,0.2秒後には「ああ。ちらしか」と当たり前に思ったわけでありますけれども。

 でもホントに「ぢらし定食」だったとしたら,マニアなお客が来るのかもしれないでありますね。
 チョウチョのお面をつけてムチを持った女主人が料理を前に置いて
「おあずけ! まだだよ! みっともなくよだれたらしてるんじゃないよ! この白豚どもが! お前らに使わせる箸なんかありゃしないよ! 直接口で食いな!」
とか言って罵ってくれるんでありましょうか。

 そしてこの文章を書くためにあらためて写真をじっと見ていたら,「ち」ってこんな形だっけ,と思えてきたんでした。ゲシュタルト崩壊というやつでありましょうか。
 そして,これ「も」にも見えるな,などと思ったんでした。「もらし定食」。これもまたマニアが…。


 こちらはもちろんまごうかたなき「豚定フェア」であります。
 豚焼肉定食とか豚生姜焼き定食とか豚キムチ定食とかあってうまそうであります。

 ただ,ちょっとこの垂れ幕がはためいていたこともあって「豚足フェア」に見えてしまったというそれだけなんでした。
 まぁ「豚定フェア」でも「豚足フェア」でも煮たような,いや似たようなもんでありますけれども。そうでもないか。

 しかし,あらためて見ると「定」と「足」というのは似た形なのだなぁと思えるでありますね。「定まる」と「足りる」というのは関係があったりするんでありましょうか。

「足」と「定」を取り違えて何か面白いことになるかなぁとちょっと考えてみましたけれども,あんまり面白くならないでありますね。
「住所不定」に対して「住所不足」とか。住所を憶えきっていない子どもでありましょうか。
「残高不足」に対して「残高不定」。まぁあんまり銀行残高が固定されてる人もいないでしょうが。
「定職につく」に対して「足織につく」。足専門モデルとかでありましょうか。
「足利銀行」に対して「定利銀行」。この銀行では利率が変動しないみたいであります。

 もっと考えれば面白いのもありそうでありますけれども,アタマが足りなくて思考が定まらないんでした。思考が足りなくてアタマが定まらないのか? あれ?


 こちらは電柱広告の住所表示でありますけれども,まごうかたなき「上所一丁目11」であります。

 ただ,最後の「11」が「!!」に見えて「ここは上所一丁目!! いっちょめいっちょめ!わーお!」と言われたみたいだったんでした。古いですか。そうですか。

 おそらくは「一丁目」は漢数字なのに「11」はアラビア数字であること,そして下に小さく書いてある「08」というのが意識下で「!!」の下の点に見えたというあたりが原因のような気がするんでした。

 これがもし「上所一丁目を元気にするためのサブリミナル」であるとしたら,上所一丁目にはかなりの策士がいるようでありますね。まぁ,ちょっと策におぼれかかっているかもしれませんが。

 でもけっこう効果があったりするのかもしれないでありますね。
 全国の「11番地」にお住まいの方は試してみてはいかがでありましょうか。かなり限定的になりそうでありますけれども。
「1番地」でもいいでしょうけれども,ちょっと迫力がなくなるかもしれないんでした。

「ぢらし定食」は新潟市中央区・上所2あたり。
「豚足フェア」は新潟市中央区・米山6あたり。
「一丁目!!」は新潟市中央区・上所1あたり。