店名物件


 街を歩けばお店というのはたくさんあって,たいがいのお店には店名を掲げたカンバンがあるんでした。
 そういった店名というのは基本的に自由につけられるわけで,ウケを狙おうと思えばいくらでも狙えるわけでありますけれども,ウケ狙いが見えてしまうものはあんまり面白く感じなかったりするんでありますね。
 まぁ,店名というのは基本的に閉店まで使うものであろうし子どもの名前みたいなものなので,店主としては一生懸命考えたり由来があったり愛着の持てるものにしているのがほとんどなんでしょうけれども。


 そんなわけで最初の物件は「よだれ三尺」さんであります。
 んー。これはどうも,店名に関しての私基準としてはボールひとつ外れている感じであります。ちょとウケ狙い的なニオイがしてしまうんでありますね。

 いやもちろん,寿司屋でこの名前にするというのはタイヘンなギャンブルのような気がするし,味に自信があるからこういう名前をつけられるということなんでしょうけれども。

 まぁそういう私基準は別として,店に入ると客が全員,男も女も口半開きでよだれを三尺たらしている絵を想像すると,やはりちょっと笑ってしまうところではあります。
 それにしても三尺,1メートル弱のびるというのは大変粘り気のある唾液でありますね。座っているとヒザにつきそうなんで,みんな突っ立っているんでありましょうか。突っ立って口半開きでよだれ三尺たらしているトレンディー(死語か?)な男女でいっぱいのお店というのは,ちょっと見てみたいところではあります。

 しかしこの文字をじっとながめていると,これは本当に「三尺」なのかという気もしてくるんでした。
 実は「三尺」ではなくて「ZR」と書いてあるんではあるまいか。ほ〜ら。だんだん「ZR」に見えてきた。
「よだれZR」というのはなんだかちょっとカッコイイよだれでありますね。いったいどんなよだれなのかわかりませんけれども。


 こちらは「肴料 こば」さんであります。
 ごく普通のカンバンであって名前も飲み屋さんとかによくありそうな感じでありますけれども,ちょっと「肴料」というのが気になったんでした。

 私はあんまり酒は飲まないし飲み屋さん料理屋さんにも行かないのでよくわからないんですけれども,この「肴料」というのはそういうお店のカテゴリーを示すものなんでありましょうか。

「肴料理」とかだと何の疑問もないんですけれども,「肴料」だとなんだか結納とかそんなときに使いそうな言葉であります。いや私は結納もしたことないんでよくわかりませんが。

 お酒を飲む人や結婚している人には常識的なことで笑われるのかもしれないですけれども,下戸で結婚もしていない人間としては疑問になってしまったりするんでした。
 やはり色々な経験を積まないと色々な知識は吸収できないのだろうなぁ。酒飲んだり結婚したりしないとダメかなぁ。


 こちらはおそらく「居酒屋とくなが。」さんであろうと思われるんでした。
 その名前だけ聞けばおかしなところは全く無いわけでありますけれども,このように表記されると「お?」と目が引かれてしまうんでした。

 なぜそこで改行するのか。なぜ句点がつくのか。普通のやり方と異なっているとやはり「お?」と思ってしまうんでありますね。
 まぁ句点については「モーニング娘。」などによってもはや見慣れた表現になっていますけれども,改行や句読点はその配置によって読む側の混乱をもたらして,ときにそれが面白かったりするんでした。
 内容自体は平凡でも,そのデザインによって目を引く効果を引き出すあたりなかなかであります。

 あるいはこれは「とくな」をひとまとまりにすることによって「居酒屋とくな」つまりは「お得な居酒屋」であるという印象を刷り込もうとしていたりもするんでありましょうか。だとしたらかなりの策士でもあるように思えるでありますね。

 ただ,最後に「が。」がついていることによって「居酒屋とくな が。」と認識してしまい,「お得な居酒屋…だがしかし。」という何か裏のあるお店だと思われてしまわないか,という懸念も持ってしまうわけでした。持たんか。


 こちらはちょっと古い感じのカンバンであります。おそらくは「たにぶん」さんではあるまいかと思われるんでした。

 ただ「ぶ」と「ん」の位置関係が微妙なところでありますね。
 もともと縦書きでレイアウトされていたものを強引に横書きに直したのかどうか。この書き方だとどうしても「ん」が先になるような気がするわけで,そうするとここは「たにんぶ」さんなのかもしれないんでした。

「他人部」というのはどんな部活動なんでありましょうか。みんなが同じ部屋にいるけれども,全員他人で無関心。
 んー,まぁもともと居酒屋なんかはみんな他人なわけなので,他人部というのは正しいのかもしれませんが。

 それとも「たにんぶ」というのは「ちくわぶ」とかの仲間なんでありましょうか。どんな形の麩なのか。やはりおでんに入っていたりするんでありましょうか。「ちくわぶ」自体がほぼ関東限定の食べ物らしいので,私は食べたことないんですけれども。

 あるいは,下に書いてある矢印は店の方向じゃなくて読む方向を示しているんでありましょうか。すなわちこのお店は「ぶんにた」であると。より意味不明でありますけれども。

 でも「ちょっと一ぱい 食べてびっくり」から続くから,「ぶんにた」よりはやはり「たにんぶ」であって,これは料理の名前なんでありましょうか。食べてびっくりするくらいの「たにんぶ」,味わってみたいものであります。
 そうすると店名はどれになるのか。「徒歩一分」というのが実は店名だったりするのかもしれないでありますね。かなり先進的な命名であります。

 関係ないけれども上の「N」っぽい矢印はやはり北を示しているんでありましょうか。方位磁石を持って飲み屋さんを探す人もあまりいなそうでありますけれども。冒険家の集まる飲み屋さんなんでありましょうか。

「ZR」は新潟市中央区・東堀通9あたり。
「肴料」は新潟市中央区・南万代町あたり。
「が。」は新潟市中央区・医学町通1あたり。
「たにんぶ」は新潟市中央区・南万代町あたり。

※今回はお店の名前について色々と妄想したわけでありますけれども,決して茶化しているわけではなくてオモシロがっているだけでありますので,関係者各位は怒らないでやってくださいませ。みんなそれぞれとてもおいしいお店だと思われます。行ったことないけど。