消去物件



 工事現場などでよく見られる,進入禁止を宣言するオジギビトであります。この物件ではオジギはしていませんけれども。
「はいっては いけません」という表示がハッキリ読めるので,カンバンとしての役割は十分に果たしているわけでありますけれども,隣の塗りつぶされた部分がちょっと気になってしまうんでした。

 おそらくは,こういったカンバンでは定番である「あぶないから はいっては いけません」であろうと思われるでありますね。ただ,その「あぶないから」をあえて塗りつぶしているというところが気になるんでした。

 以前は工事中で確かに「あぶないから」進入を禁止したんだけれども,工事が終了して危険ではなくなったと。でも地主としては土地に入ってほしくないと。そういうことで「あぶないから」を消去したんでありましょうか。

 そのまま「あぶないから」と書いておいても支障はなさそうでありますけれども,「危なくないのに危ないと書いておくのは嘘をつくことである。嘘はよろしくない」という信念を持った,律儀な地主さんなんでありましょうか。

 あるいは,もともとのカンバンというのが昔(今でもか?)外国にあったような「有色人種は はいっては いけません」とかいう感じの,すごく差別的なことが書かれたものであって,それを誰かに非難されて塗りつぶしたんでありましょうか。

 はたまた,この近所にはテレビ局もあったりするので,「差別用語 は言っては いけません」という,アナウンサー向けの標語だったりするんでありましょうか。
 その他いろいろなNGワードが,日替わりで書かれていたりするのかもしれないでありますね。私が写真を撮った日は,何を言っても許されるという,アナウンサーにとっては夢のような日だったのかも…しれなくないか。


 こちらは,何の敷地かわからないけれども草ボウボウになっているようなところに掲げられたカンバンであります。

「    から中に はいらないこと。   をすてたり を おいたりしないでください。 新潟市役所」
ということで,ところどころ文字が消えているんでした。

 赤い文字で書かれている部分が褪色してしまったというカンバンは多くあって,これもその類であろうかと思ったわけでありますけれども,よく見ると色が褪せたということではなくて消されているんでありますね。
 消された下のほうには赤い文字がうっすらと見えているんでした。

 じっと見てみると,どうやら最初の空白4文字分は「あぶない」で,次の2文字分は「ゴミ」のようであります。最後の1文字分はまったく見えないんでした。そうするとこれは
「あぶないから中に はいらないこと。 ゴミをすてたり?を おいたりしないでください。 新潟市役所」 ということでありますね。

 まぁ内容的にはごく普通であります。なぜあえて部分的に消したのかは,やはりナゾでありますが。
 ただ,最後の「?をおいたりしないでください」というのが,いったい何を置くなということなのか,モヤモヤしてしまうんでした。一文字で,置いてはいけないものというのは何か。気になるところであります。

 あるいは,そういうこととはまったく関係ないふたつの文章が書かれているんでありましょうか。

 この近所に「唐竹割中学校」という中学があって,そこは不良の巣窟なので「唐竹割中学(通称:から中)に入学してはいけない」という警告が書かれているのかもしれないでありますね。
 そしてこの近くには「尾捨足男(をすてたりを)」さんという初老の人が住んでいて,その人が最近ボケてきたので「尾捨足男 老いたりしないでください」という激励文が書かれているのかもしれないんでした。しれなくないか。

※1 この近所に「唐竹割中学校」という学校は存在しなかったような気がします。
※2 もしどこかに尾捨足男さんが実在していたら,これはあくまで私の妄想ですので怒らないでください。


 オマケ。こちらはおそらくひとつの建物内に複数の会社が入居している建物のカンバンであります。オーナーは同一で,複数の会社を経営しているのかもしれないんでした。

 カンバンには5つのマルが描かれていて,その中の2つには会社の名前が書かれているわけでありますけれども,他の2つは「株式会社」とだけ書かれていて残りのひとつは何も書かれていないんでした。

 もともとは,全てのマルに会社名が書かれていたんでありましょうか。けれども,昨今の不況の影響で3つの会社をたたまざるを得なかったのかもしれないでありますね。

 で,ひとつのマルは完全に会社名を消してしまったんだけれども,あとの2つを消そうとしたところで
「いや。オレは必ずまた5つの会社を経営してやるのだ。そのためにも『株式会社』の文字は残しておくのだ。いつかまたここに会社名を記してやるのだ」
と思い直したのかもしれないんでした。再建できるようにがんばっていただきたいところであります。

※もちろん,これは私の勝手な妄想であります。実際の会社の状況とは一切関係ないので,会社に激励のメッセージを送ったりしないようにいたしましょう。

「はいっては」は新潟市中央区・下大川前通6あたり。
「おいたり」は新潟市西区・流通1あたり。
「5マル」は新潟市西蒲区・巻甲あたり。