やめよう物件



 法治国家においては,やってはならないことというのが数多くあるわけですけれども,それは裏を返せばやってしまいがちなこと,誘惑にかられてしまいそうになることであったりするわけでした。

 そんな「やってはいけないこと」の中でも一番身近にあって悲惨なケースになりやすいのが飲酒運転でありましょうか。
 私はもともと酒は弱いので,飲んで運転なんていうことは全く考えられないわけですけれども,強い人なんかは「なんで酒飲んで運転しちゃいけないんだ? 理解できん」と思っていたりするのかもしれないんでした。

 そんなわけで,上の物件。
「実行目標 飲酒運転をやめよう 岩室村」とのことなんでした。だいぶ色が薄くなってしまっていたので,写真の明度などをちょっと補正しております。それはともかく。

 まぁ,カンバンとしては至極当たり前のことが書かれているわけであります。飲酒運転はしちゃいけません。
 ただ,書き方がちょっと気になるんでありますね。「飲酒運転をやめよう」という言い方からすると,これはもう飲酒運転していることが前提となっているような気がするんでした。

「飲酒運転はやめよう」であればまだ未然防止の意味合いになりそうですけれども,「飲酒運転をやめよう」だと既に常態化している飲酒運転という習慣を無くしていこうという提案に見えるわけでした。

 そもそもが「実行目標」ということなんで,「これからぼちぼち,酒飲まずに運転,とやらをやっていってみるかぁ」というくらいのところだったりするんでありましょうか。

 まぁ,カンバンを見てもだいぶ古い感じのものでありますけれども,かつては本当にそんな調子だったのかもしれないでありますね。この岩室村も,すでに新潟市の一部であります。


 こちらは肉屋さんのカンバンであります。ちょっとピンがボケていて申し訳ない限りであります。そのうち撮りなおすかもしれませんがそれはともかく。
 こちらのお店ではSPF清浄豚というのを扱っているらしいんでありますね。そしてその清浄豚というのがとにかく
「安全! おいしい! もうとまらない!」
ということなんでした。

 食品偽装やら残留農薬やらいろいろある昨今なので,「安全」で「おいしい」ことが保証されるんであればそれは大変結構なことだと思われるわけでした。

 しかし「もうとまらない!」のはどうなのかという気もするでありますね。
 一旦この豚肉を口にすると,もう気を失うまで食べつづけてしまうんでありましょうか。

 あるいは,この豚肉を食べて数日すると禁断症状があらわれて,3日に一度はSPF豚を食べないといけないカラダになってしまうんでありましょうか。そして禁断症状のあらわれた客には法外な値段で豚を売ったりするんでありましょうか。客は豚を手に入れるために悪の道へ踏み入らなければならなかったりするんでありましょうか。かつての清純派アイドルも夫にすすめられて豚の世界に入ってしまうんでありましょうか。日食を見に行った先でも豚を食べたりするんでありましょうか。夫が路上で捕まったらその場で泣き崩れたあと身体から豚が抜けるまで姿を隠したりするんでありましょうか。(※数年後に読む方へ。これは09年夏頃の物件であります)

 もちろんこれはいつもの妄想であって,実際のSPF豚はとても安全でおいしくてまた食べたいと思ってしまうような豚肉であり(食べたことないですが),禁断症状の出た客に法外な値を告げるようなお店ではないわけであります。たぶん。


 こちらは,場所がわかりにくいですけれども,自走式立体駐車場の出口であります。出口の,車を止める遮断機のようなゲートのところに貼られているハリガミなんでした。

 人間が駐車場内の車道をフラフラしては危ないわけで,
「車道に入らないこと バーの開閉でケガする恐れあり」
ということであります。

 まぁ,私としても駐車場の中で車道に出ようとはあんまり思ったこともないですけれども,それは車が来てキケンだからだと思っていたわけでした。
 しかしこのハリガミによれば,キケンなのは「バーの開閉でケガをする恐れ」があるからだということらしいでありますね。それは思いつかなかったんでした。

 でも,あのバーでケガをするということがそんなにあるんであろうかという気もするでありますね。あれでケガをするという確率はどのくらいであるのか。そんなことがあったら,むしろラッキーなことであるような気すらしてくるんでした。

 それとも本当はこれにはもっと別の意味が隠されているのかもしれないでありますね。
「車道」というのは実は「シャドウ」すなわち影の世界,闇の世界のことなのかもしれない。カタギの人は影の世界に入ってきちゃいけないという,隠されたメッセージなのかもしれないんでした。

 そしてさらにカタギの人に対する詳細な注意事項が書かれていて,「繁華街のバーへ飲みに行く場合,開店時間閉店時間の間際が危ない。ボッタクられて心および身体にケガしないように気をつけましょう」ということなのかもしれないんでした。しれなくないか。

「飲酒運転を」は新潟市西蒲区・和納あたり。
「とまらない」は新潟市中央区・田中町あたり。
「バーの開閉」は新潟市中央区・東堀前通8あたり。