とる物件



 住宅地の中に土地が一軒分ポツリと空いていて,大きく「 地」と書かれているんでした。なぜ最初の一文字をとってしまっているんでありましょうか。
 写真では下の電話番号には一応モザイク加工をしておりますけれども,上の「 地」は無修正であります。  通常こういったカンバンには「売地」とか「貸地」とか書かれていたりするわけですけれども,そういったものとは異なるんでありましょうか。

 トマソンの分類に「ウヤマタイプ」というのがあって,それは現在営業していないお店のカンバン的な部分に「ウヤマ 店」と書かれているというものなんでした。商いの対象だった,肝心の文字だけが消されているわけでありますね。
 ウヤマさんのお店は現在とりあえず営業していないけれども,いつかまた別の商売をするときのために「ウヤマ 店」の表示は残し,再開したときに「ウヤマ米店」なり「ウヤマ靴店」なりにするつもりなんであろうか…というような想像をさせる,ある意味叙情的なタイプのトマソンが「ウヤマタイプ」なんでした。

 そのウヤマタイプとちょっと似ている感じがしますけれども,こちらはあんまり叙情的な香りはしないでありますね。この土地のやりとりが現在進行中だからでありましょうか。相手によって「売」でも「貸」でも対応しようという,そういう計算を感じてしまうのかもしれないんでした。

 それともこれは実は「基地」であって,地下に地球防衛軍の施設があるのかもしれないでありますね。ときどき地面が割れてミサイルやら戦闘機やらが飛んでいくのかもしれない。
 宇宙人に基地であることを悟られないように「基」の字を隠しているのかもしれないんでした。逆に目立ってそうですけれども。

 あるいはこれは単に大きな表札,または「引っ越しました」という連絡板なのかもしれないでありますね。いろんな名字の人はいるわけで,「地」さんというのもけっこういるのかもしれない。あるいは本当は「菊地」さんとかなんだけれども何かの事情により名前を隠しているのかもしれないんでした。かえって目立ってるような気はしますけれども。

 はたまたこれは「 地」の空白は「空き」を意味していて,純粋に「空き地」を表現している現代芸術だったりするんでありましょうか。
 土地が空いていることなど許されない日本の都市において,空き地というのはタイトルをつけて鑑賞するものになっているのかもしれないでありますね。なってないか。

 ひょっとすると,伏字にするくらいであるからとても恥ずかしい言葉が書かれていたりするんでありましょうか。「越地」とか。別に恥ずかしくないか。


 こちらはとある整体院さんであります。写真ヘタの上にわかりにくいのでいつもよりちょっと大きめの写真。

 右上の方には整体院さんの名前が書いてあって,見えにくいですけれどもその上には「いたみとり なやみとり」と書かれているんでした。
 そして左の壁には「ほくろとり」。さらに下のカンバンでは「何をやっても取れなかったセルライトが確実に取れる!」ということなんでした。

 むぅ。何でもとってしまうんでありますね。
 整体院さんなので「いたみとり」はお手の物かもしれないでありますね。しかし「なやみとり」というのはカウンセリングでもしてくれるんでありましょうか。院長さんの人柄に触れると悩みなんて消えてしまうんでありましょうか。
 まぁ,身体の痛みイコール悩みということで,痛みをとれば悩みもとれますよということなのかもしれませんが。

「ほくろとり」は最近(H21/04)専門医以外の施術がちょっと問題になったりしたような気もしますけれども,大丈夫でありましょうか。この写真を撮ったのは問題になる前でしたけれども。大丈夫でありますね。多分。(根拠なし)

 その「ほくろとり」以前にも何かここにカンバンがあったような形跡がありますけれども,以前は何だったんでありましょうか。やはり何かをとっていたんでありましょうか。それとも「やきとり」とか書いてあったりしたんでありましょうか。


 オマケ。
 こちらも,おそらく以前カンバンがあったと思われるんでした。電気のつく,あんどん形式のカンバンだったようで,真ん中から配線のようなものが露出しているんでした。

 カンバンが撤去されるということはひとつのお店が終わったわけで心情的に切ない部分があるわけですけれども,ちょっとブタの尻尾っぽいところがなんだかカワイイと思ってしまったわけでした。

「○地」は新潟市中央区・東出来島あたり。
「とり」は新潟市中央区・東万代町あたり。
「ぶた」は新潟市中央区・女池7あたり。