キケン物件3
昔から,世の中には危険なことがたくさんあるんでした。文明の世になってからはだいぶ少なくなってはいるんでしょうけれども,文明の世だからこそ誕生した危険というのもあったりするわけでした。
昔の人からすると,地面に何か警告の文字が書いてあるというのはいったい何であろうかと思ったりするかもしれないでありますね。
そんなわけで,上の物件。
狭い交差点に書かれた「キケン」の文字であります。言わんとすることは十分にわかるし,有用なものだと思われるんでした。
ただこの場合,普通は「止まれ」と書いてあるような気がするんでありますね。ここであえて「キケン」と書いてあるというのはどうしたことなんであろうかと,思ってしまうわけでした。
直交する道のほうには「止まれ」のマークが描かれているようなので,一時停止するべきはそちらの道で,こちらは優先権があるのかもしれない。しかし危ないことに変わりはないのでとりあえず「キケン」と書いてみたのかもしれないでありますね。
しかし「キケン」と書かれているのを発見した場合,ドライバーはどうするでありましょうか。
まぁ普通は一時停止なり徐行なりするでしょうけれども,慣れない状況に弱いドライバーは「えっ。キケンて…どうすればいいんだっけ?あれ?なんだっけ?」とパニックになったりするかもしれず,自らがキケンになってしまうかもしれないんでした。
「止まれ」と命令されれば止まるしかないわけですけれども,「キケン」は命令ではなく状況説明なので,その後の行動はドライバーなり歩行者にゆだねられるということであり,ある意味責任回避の表記であるような気もするでありますね。
「ま,止まらなくてもいいんですけどもね。一応キケンだということはお伝えしましたのでね。あとは自己責任でよろしく」ということなんでありましょうか。
あるいはこの「キケン」というのも「止まれ」と同様に命令なんでありましょうか。すなわち「棄権せよ」ということだったりするのか。
この道を通行する場合には,何かを棄権しなければならない。ひょっとすると,先の選挙ではこういった文字が投票所へ向かう道にたくさん書かれていて,多くの人が棄権していたりしたのかもしれないでありますね。しれなくないか。
選挙でなくても,ここがマラソンや駅伝のコースになっていたりしたら,ゴールする選手はひとりもいなくなってしまうかもしれないでありますね。幸い,ここを通るマラソンコースというのはないようですけれども。
こちらは普通に「止まれ」であります。ありますけれども,ちょっと間延びして「止ま れ」となってしまっているんでした。
マンホールを避けたんでしょうけれども,「止ま…れ」というのはなんだか言いよどんでる感じで,ちょっとリズムが狂いそうであります。ブレーキを踏むタイミングが狂わないでありましょうか。
このようなセリフになる場合というのは,「止まれ」と言っている最中になんらかのハプニングが起こったときでありますね。
ムリな横断をしようとしている子どもに「止まれ」と言おうとしたが時遅く,子どもが車にはねられてしまったとか。
刑事が犯人に「止まれ!」と言おうとしたときに後ろにいた犯人の仲間に後頭部を殴られたとか。
どういった場合にしろキケンな,ヒサンな状況が想像されるわけで,そういったことを想像させることによって注意を喚起するという,実は高レベルな路面表示だったりするのかもしれないでありますね。
いないか,そんな想像する人間は。
オマケ。こちらは川岸の路傍にひっそりとたたずむ「電話注意」のカンバンなんでした。これだけ書かれていても,電話の何に注意すればよろしいんでありましょうか。
公共の施設や乗り物なんかであればマナー的なことでしょうけれども,道端であるし。それほど人通りの多いところでもないし。
この場所にはケータイ電話専門のスリがいて,知らぬ間にケータイを盗まれてしまうから注意しましょうとかいうことだったりするのか。
あるいは,この場所を通るとどこからかケータイに電話がかかってきて,それに出ると呪われてしまうという恐怖のスポットだったりするんでありましょうか。
実際には,この裏側には「電話ケーブル有り」みたいなことが書かれていたので,そういった工事関係者に向けた注意のようなんでした。
しかしこちらからは「電話注意」としか読めないので,どうしても不安になってしまうわけでした。
まぁ,最近の道端ケータイのマナーの悪さ,傍若無人さには私もウンザリしているので,なんだかわからないけど電話を注意している,というこんなカンバンを見て多少なりともそういうのが改善されればいいがな,と思ったりもするんでした。
そういう人間は通話やメールに夢中で,道端のカンバンなんかには目もくれてないのが現実ではありますけれども。
「キケン」は新潟市中央区・春日町あたり。
「止ま…れ」は新潟市東区・中山5あたり。
「電話注意」は新潟市中央区・八千代2あたり。